虫とけものと家族たち  ジェラルド・ダレル

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ダレルさんが家族と一緒にギリシャのコルフ島に住んだ5年間のことを書いたのがコルフ島3部作です。「虫とけものと家族たち」はその一作目です。2作目の「鳥とけものと親類たち」と合わせて、昔、母が買ってくれた物です。

子どもの時から私は、ダレルさんと同じく自然や生き物が大好きでした。図鑑が愛読書で、ぼろぼろになるほど読みました。
家にはこじんまりとした中庭があり、果樹や花木、雑多な草花が植えられていて、手入れがあまりされていなかったのでまるで雑木林のようでした。そこで虫を探したり木の実をとったりして遊びました。
涼しげなアスパラガスの茂みと低木に囲まれた、子どもが2人入れるくらいの場所があって、そこに座り込んでお気に入りの物を並べて遊んでいると、庭を通り道にしている野良猫から「何だよお前」という顔で見られたりしました^^;
記憶にないほど小さいときには犬や猫も家にいたのですが、亡くしてとても悲しい思いをしたという母の一存で、それからは大きな生き物は飼っていません。でも、バッタや蝶の幼虫、カブトムシ、カタツムリ、果てはカニアメフラシまで、様々な小動物を私の一存で飼っていました。カニは脱走して後日大変なことになりましたが…。アメフラシも脱走こそしませんでしたが(同)^^;
 
 ギリシャのキラキラとした陽光の中に自分がいるような気分になる本です。ダレルさんのユニークな家族(長兄がロレンス・ダレル)と、美しい自然や生き物の描写がすばらしく、夢中にさせてくれます^^
何かあるたびに引っ越しをし、章ごとに「いちごのようなピンクの家」「スイセンのような黄色の家」「雪のように白い家」と題がつけられています。家の周りの植物や生き物の様子が事細かに書かれ、「ああ、この家に住みたいっ!」と何度思ったことでしょう♪
ジェリー(ダレルさんの愛称)が近所の人々にかわいがられ、通りすがりに冷えたスイカや様々な果物をもらったりしていることも子供心に訴えるものがありました^^

ジェリーは犬を始めフクロウやカメ、ヤモリなどありとあらゆる生き物を飼ったり観察したりしていて、家に持ち込んだ中には赤ちゃんを抱えたサソリとか、家族に歓迎されない物もありました。それがテーブル上にばらまかれて大騒動になったりとか… 
でも、家族はジェリーの興味を否定せずに、受け入れてくれています。ジェリーの博物学の先生になるセオドアが、ジェリーを子ども扱いせず、生き物を愛する同志のように接しているのが素敵です。

自然についての描写で特にお気に入りなのは、夜の海辺にピクニックに行ったエピソードです。夜光虫によって燐のように光る海と、オリーブの木立から舞い降りて来たたくさんのホタルの輝き、燐光を身にまとって飛ぶイルカの競演は、どんなにすばらしかっただろうと、見たくてたまらなくなりました。
このコルフ島で過ごした年月のおかげで、ダレルさんは動物学者になり、一生を動物保護の活動などに捧げることになったのだと思います。

自然に関心のあるすべての人が読むべき本だと思うし、そうでなくてもこの本を読んだ人すべてが楽しめるだろう、そんな本だと思います^^
それなのに、ダレルさんの本はこのシリーズも含めほとんどが絶版です。今普通に買えるのは「積みすぎた箱舟」だけだと思います。ダレルさんが動物保護の仕事についてからのことが書かれている本ですが、これも最高におもしろいです。

3部作のうち、3作目の「風とけものと友人たち」だけが未読です。これだけが文庫にならず、買おうと思ったときにはすでに絶版になっていました。それで先日「復刊ドットコム」に行って投稿してきました。他にもたくさんの同志がいたので、いつか復刊してくれるのではないか…と思います。この記事を読んで興味を持って下さった方がおられましたら、「復刊ドットコム」でぜひ投稿して下さい^^