廃墟ホテル  デイヴィッド・マレル

イメージ 1

新聞記者のバレンジャーは、「クリーパーズ(忍び入る物)」と自分たちを称する、大学の同じ研究室のメンバー達とともに、廃墟になったかつての豪華ホテルに忍びこみます。そこにはオーナーが設置した秘密の通路とともに様々な秘密が…。

ディヴィッド・マレルは「ランボー」の原作者として有名です。読み始めた時は、「ランボー」とは雰囲気違うな、と思いました。と、言っても、私はマッチョ系が苦手なんで、「ランボー」は見たことないんですよね…w

初めの方はキングの「シャイニング」のように、ホテルに滞在していた人達の過去が明らかになって行きます。現れる奇形の動物たちやホテルで起きた殺人の記録など、いかにもこれから超自然的なものと対峙するような雰囲気で進んでいきます。
でも、腐った床を踏み抜いたメンバーを引っ張り上げる様子がすごく子細に書かれていて、「ランボー」的な香りがして来たな~と思いました。

そして、メンバー以外の3人組が現れてから、物語は一気にサバイバル路線一直線に。3人組はホテルに滞在していたギャングの金庫室を狙っていたのです。
3人組との心理戦を含む攻防に加え、新たな謎の敵も現れます。新たな敵は、階段にレーザーワイヤーを仕掛けた上に、ホテルのあちこちに爆弾を仕掛けています。彼は何者なのか?また、ホテルで見つかった女性の遺体は誰なのか?

これと並行して、バレンジャーが一行に加わった理由や、過去の過酷な体験についてが語られます。
犯人の正体については、普通に読んでいれば見当がつきますが、この物語の醍醐味は謎解きというより、とにかくどうやって窮地を脱するのかということに尽きます。マレルには実際にこういう経験があるんじゃないかと思われるほど、リアルなサバイバルの様子に圧倒されます。映像が目に浮かぶようで、映画にしても良さそうな感じです。
誰が生き残るのか、またどうやって生き残るのか気になって、最後までぐいぐい読まされます。また、登場人物の心理がよく描かれているので、暗闇や敵と対峙するときの恐怖が伝わってきます。
想像していた超自然的なものは出てきませんでしたが、人間の怖さはじゅうぶん感じることができた作品でした。

マレルにはブラム・ストーカー賞を取った作品が含まれる「苦悩のオレンジ、狂気のブルー」という短編集と、私も持っている「真夜中に捨てられる靴」などのホラー作品もあります。特に、「苦悩の~」はかなり絶賛されているようです。文庫にならないかしら…。
ランダムハウス講談社さんよろしく~。