タルト・タタンの夢  近藤史恵

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フランス料理店「ビストロ・パ・マル」のシェフ三舟が、客の周辺のちょっとした事件を解決する短編集です。

まず目を引くのがカバーイラスト。おしゃれで三舟シェフの雰囲気もよく表しています。
目次はメニュー風で、料理のように日本語の題とフランス語の題が並んでいます。この統一感いいですね^^

三舟はフランスで10年以上も修行してきた凄腕のシェフです。フランスでは名前と眼光の鋭さから三船敏郎の親戚と勘違いされ、「サムライ」と呼ばれ一目置かれる存在に。でも、ワインケース一つでさえ、自分で持ち上げられない非力さが何かかわいらしいですw
無口と言っても、お客の事件につい関わってしまうあたり、面倒見が良さそうです。
料理人の志村は高級ホテルで働いていたこともある実力派。三舟の料理に傾倒して、この店で働いています。清潔感のある二枚目だそうですが、妻帯者です^^;
ソムリエの金子は短く刈り上げた髪が印象的な女性です。趣味は俳句作りで、商店街の「俳句同好会」に入っているほど。でも、作る句は「ジャイアンの歌よりまし」なレベルですw
そして、語り手でもあるギャルソンの高築。けっこう何でも大真面目に考えるタイプのようです。
このたった4人しかいない小さな料理店ですが、家庭料理的な親しみやすさと確かな味で人気を呼び、週末は必ず予約でいっぱいになるほどです。

とにかく料理についてのディテールの細かさはまさしく「空腹小説」!(byチルネコさん)知らない料理名や専門用語もきちんと説明が出てくるので分かりやすいです。これほどフランス料理について詳しく書くにはかなりの勉強が必要だったはず…。「サクリファイス」もそうですが、まるで近藤さんがその世界にいるかのような臨場感があります。作家さんってすごいですね~^^

タイトル作「タルト・タタンの夢」ですが、タルト・タタンというのがりんごの焼き菓子というのは分かりましたが、今ひとつイメージがはっきりしなかったのでネットで検索してみました。出てます出てます、作り方から写真付きで懇切丁寧に~^^キャラメル色に煮詰まったりんごの色が何ともおいしそうです♪
「タルト~」では、このタルト・タタンの作り方が大きなポイントになっています。

「ロニョン・ド・ヴォーの決意」では偏食の激しいお客粕屋が女性を連れて現れます。粕屋にどんな料理を出すのか、また、女性が起こした一悶着とは?
家庭料理の果たす役割について、なるほどと感じさせられました。

一番心に残ったのが「割り切れないチョコレート」です。店の近くにできたチョコレート専門店のチョコは、なぜか中途半端な数ばかりで箱詰めにされています。その謎と、オーナーの鶴岡の人となりがじんとくる佳作です^^

作品のいくつかに「ヴァン・ショー」というのが出てきます。スパイスを入れてフルーツを浮かべたホットワインです。登場人物の疲れた心を癒すのにぴったりの飲み物です。シリーズの次作は「ヴァン・ショーをあなたに」というタイトルで、また、心温まる物語が楽しめそうです^^

これ、連ドラにならないかしら…。実際にここに出てくる料理を見たい気がします^^
三舟シェフは誰がいいかなあ…少し崩れたいい男…う~ん

4月3日は私の誕生日なのですが、もうフランス料理を食べに行くしかないですね♪