ミスト  監督 フランク・ダラボン

ずいぶん前にキングの短編集でこの原作を読みました。この作品だけは中編で、文庫の3分の2を占めてました。
得体の知れない霧に囲まれ、スーパーマーケットに閉じこもった買い物客たち。霧の中からは、見たこともない生物が次々に現れ襲いかかってきます。たまたま中にいた狂信者に扇動される一部の人々。霧という、向こうが見えない事への恐怖、怪物への恐怖、人間の心の恐怖が見事に描かれた作品です。

映画も、その恐怖を原作通りにリアルに描いています。飛び回る巨大昆虫やタコのような触手(しかも触手に口が…)霧の中を歩く巨大なモンスターなど、実際に見ると怖すぎます;;猛毒を持った昆虫や、クモの糸が強酸性で触れると物が溶けてしまうなど、エイリアンを彷彿とさせます。

怪物と同じ程度?に恐ろしいのが狂信者のカーモディと、彼女に従う人々です。最初にはみんな「何?この変なおばさん」くらいにしか思っていなかったのが、人が次々と死ぬ様子を見て、だんだんと彼女が神や贖罪について語る言葉に動かされていきます。目の前の惨状から逃避したい、とにかく何か心の拠り所がほしいという気持ち、理解できるだけによけいに怖さを感じます。閉鎖的な空間でつのっていく不安と焦燥感、狂気など、人間の心理がうまく表されていました。

それにしても、原作とこうもラストが違うというのはどうなんでしょう…。
原作はフェードアウトするような終わり方ではありましたが、もしかしたら明るい未来も待っているかも知れないと感じさせました。でもこの映画のラストは…。主人公の八方ふさがりの状況にさらに追い打ちをかける事実の数々、スーパーマーケットに残った人々との明暗など、不条理テイスト爆発です;;
希望を持ち続けることの大切さをこれで語ろうとしてるのかも知れませんが、私は納得いきませんでした。9割方すばらしい作品であっただけにとても残念です。
でも、このラストがいいと中には感じられている人もいるようなので、未見の方はぜひ自分の目で確かめて見て下さい。