ヴァン・ショーをあなたに  近藤史恵

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フランス料理店「ビストロ・パ・マル」を舞台に客の周辺の事件を解決する「タルト・タタンの夢」、その続編である本作です。
最初の4編は前作と同じく、ギャルソンの高築を語り手とした内容で、あとの3編はそれぞれの登場人物の一人が語り手になっています。そのうちの2編は三舟シェフのフランス修業時代の話です。

「錆びないスキレット
めずらしく料理ではなく、厚手のフライパンの話です。きちんと手入れをしたはずのスキレットがたびたび錆びてしまうのはなぜなのか?思いもかけない出来事と結びついてきます。
志村の猫を飼うことについての意見は猫好きのみなさんの共感を呼んだでしょうね。

「憂さ晴らしのピストゥ」
単に流行だけでベジタリアンを気取る女性達が食べたピストゥの秘密とは?
三舟の料理人としての信条が感じられる作品です。「大事なことは間違わないけど、大事じゃないことはしょっちゅう間違う」という志村の三舟評が面白いです^^

ブーランジェリーのメロンパン」
新しく開店することになっているパン屋の裏には、古くからあるもう一つのパン屋が…。
なぜメロンパンやパン・オ・レ(ロールパン)を店に置きたくないと言ったのか、なるほどと思いました。ほのぼのとした気持ちになるいい話です^^

マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」
堅物に見える三舟シェフに恋の噂が…。
ストーリーとしては面白かったですが、三舟の推測は、たまたまその通りだったとは言え、普通嫉妬深いからといって料理の中に云々…は考えすぎな気が^^;
最後の大騒動は笑えましたw 砂糖と塩を3回も間違えるのはあんまりですね^^;

「氷姫」
一緒に暮らしていた彼女が部屋を出て行ってしまったその理由は…?
とてもせつない話なのですが、ずっと冷凍庫に置いてあった氷ってにおいとか品質とか大丈夫なのかな~と変なことが気になってしまいました^^;

「天空の泉」
星の王子さま」がいろいろな作品の中で引用されるのは、示唆に富んだ物語だからでしょうね。「本当に大切なことは目には見えない」いい言葉です。
三舟はもっと朴訥とした人かと思っていましたが、「星の王子さま」の中の言葉を比喩的に使って話をするところなど、繊細で洞察力に優れた人ですね。でもあまりにも人の内面を見透かし過ぎるため、わざと無愛想にしているのかもしれません。

「ヴァン・ショーをあなたに」
パ・マルのヴァン・ショーのルーツが分かる作品です。
ミリアムおばあちゃんの自慢のヴァン・ショーを、義理の息子は飲まずに捨てていました。その理由は?
三舟は昔から面倒見が良かったんだな~と思いました。具合が悪いときにすぐ卵がゆや味噌汁を作ってくれる彼…いいですねえw

前作に比べ、ちょっとトーン的に暗めの作品が多かったような気がします。でも、三舟の人柄が分かる数々のエピソードは良かったです^^

お気に入りのシリーズになったので、次の作品も楽しみにしています♪