不死の怪物  ジェシー・ダグラス・ケルーシュ

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三千年もの間ハモンド家に取り憑いた不死の怪物。星明かりの夜、針葉樹の杜にその怪物は現れ、殺戮を繰り返します。当主はその場で命を落とすか、またはその後恐怖のあまり自殺するのです。

ハモンド家の当主オリヴァーは、ある日杜に入り込み、同行していた女性と飼い犬は怪物によって殺されます。オリヴァーは軽傷ですみましたが、頭を打ち、怪物の記憶はありませんでした。
オリヴァーの妹スワンヒルドと恋人のゴダードは、オリヴァーの身を案じて霊能者のバーテンデールにこの事件の解明を依頼します。

北欧神話と伝奇ホラーを合体させた非常に雰囲気のある作品です。大時代な表現は少し読みにくくもありますが、この内容にはぴったりに感じます。表紙も章ごとのタイトルも、文庫とは思えないほど装飾的で、単行本だったらもっと美麗だったんじゃないかと思いました。

一番の謎はもちろん不死の怪物の正体です。ですが、後半に入るといくつかの要素から怪物の正体は予想できてしまいます。でも、怪物がいよいよ正体を現す場面は迫力があります。

この本は絶版で、私はネット古書店で買ったのですが、帯付きの美本でした。読み終わってふと帯を読み直すと、裏側に怪物の正体が書いてあるではありませんか。帯を真面目に読んでなくて良かったです^^;わりに簡単に分かるとは言え、帯に書いてあるというのはあんまりかと…。

正体が分かると、今までの伏線に納得します。幻想的ではありますが、ミステリ的な仕掛けが多いですね。何で不死なのかということにずっと引っかかっていたのですが、なるほど、です^^

ラスト、北欧神話のオールスター総出演の解決と大団円は壮大で圧倒されました。「ヴァルキューレの騎行」が頭の中で鳴り響く感じです。
他にない雰囲気の物語で、最後まで楽しめました^^