少年たちのおだやかな日々  多島斗志之

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中学生が主人公の、全く穏やかじゃないブラックな短編集です。
単行本の時はとても爽やかな感じの装丁で、内容とのギャップに読む人を驚かせたらしいです。

「言いません」
同級生の母親の浮気現場を見てしまった則文は、その母親につきまとわれることに…。
全く関わりたくないのに絡みついてくるおばさんが気持ち悪いです。

「ガラス」
小さい頃に事故で兄を亡くした亜由美は、それ以来ガラスへの恐怖心を持つことに。自分を追い込んでいく亜由美の心理が怖いです。

「罰ゲーム」
残酷な罰ゲームに興じる、友人の姉と、それに巻き込まれる恐怖を描いています。
世にも奇妙な物語」で、永作博美さんが姉を演じていたそうです。罰ゲームがエスカレートして行く様子が怖すぎます;;

ヒッチハイク
ヒッチハイクした車に乗っていた怪しい男女とキャンプをすることになった、少年2人組の顛末。
この本の中ではわりと明るめな話かな、と^^;最後もあっけらかんとしてますね。

「かかってる?」
叔父がかけた催眠術によって何かの暗示をかけられているのではないかと疑う真木夫。徹は真木夫とともに暗示の内容を知ろうとするのですが…。
先は読めるのですが、だんだんと暗示の端々が見えてきて、ラストに向けて盛り上がって来ます。

「嘘だろ」
姉の婚約者を、スカート切り裂き魔ではないかと疑う潔は、なんとかしてしっぽをつかもうとしますが…。
これは驚く展開ですね~。まさに「嘘でしょ?」と言いたくなる感じです。それにしてもラスト…それでいいんでしょうか^^;

「言いなさい」
始めの「言いません」と呼応するような題名です。
同級生のお金を盗んだという嫌疑をかけられた伸広。2人の教師が彼を追及しますが、伸広は否定し続けます。ラストに、真実が暗示されますが、何とも嫌な後味の作品です。

「罰ゲーム」「嘘だろ」「言いなさい」が特に印象に残りました。殺人が起こる嫌な話ばかりなのですが、語り口は妙にあっさりとしていて、少年達の何気ない日常の一風景であるかのように書かれています。それが一番怖いことなのかも知れません。