六つの手掛り  乾くるみ

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大道芸のプロモーターをしている林茶父が、殺人の謎を鮮やかに解く、正統派パズラーの連作短編集です。
ダリかマグリット風のシュールな表紙がユニークだし、各編の頭に数字がついていてそれが一つずつ減っていくという趣向も、何かありそうという予感がします。

「六つの玉」
山道での交通事故をきっかけに、同じ宿に泊まることになった4人。その中のヒッチハイカーの青年が殺されます。ぶつかった一方のタクシーに乗っていた林は、部屋と窓の状況だけで犯人を推理します。
部屋や窓の図が載っているので、何とか状況を把握できます^^;だけど、あれがあれに挟まるっていうのはけっこう無理がある設定ですね^^;

「五つのプレゼント」
届いた誕生日プレゼントに入っていた爆弾で女性が死亡します。しかし女性にプレゼントを渡した男性は5人いたのです。誰が犯人なのか?
まるでかぐや姫ですね、この女性は…。実際にそんなことをする人はいないような気もしますが。名前など細かい遊びがあちこちにあるのは面白かったです。

「四枚のカード」
ESPカードを使い、人の心を読み取れるというマジックを行った教授が殺されます。マジックつながりでそこに居合わせた林は、教授がにぎりしめていた、破れたESPカードに注目します。
カードについての説明はけっこう複雑です。私は「ん?」と何回も読み直してしまいました^^;
ラストの曖昧さも、評価が分かれるような気がします。

「三通の手紙」
一緒に旅行にいったメンバーの一人が殺されます。側には、宛先を間違えて届いた手紙と旅行の写真が…。
手紙と、携帯に録音されたメッセージがうまく使われています。これは読んで納得のトリックですね。面白かったです^^
あと、謎の多かった林についての説明が出てきますが、浅見光彦みたいでおかしかったですw

「二枚舌の掛軸」
名家の主人である松平道隆に招かれたゲスト達。いたずら好きの道隆に翻弄されますが、その後道隆は死体で発見されます。
「二枚舌の掛軸」のイメージがさっぱり浮かばなかったのですが、あとの方でその図が出てきます。掛軸だけでも最初に図があると良かったのですが。
それにしても、いたずらはほどほどに…ですね。すでにいたずらの域を超えてますから^^;

「一巻の終わり」
有名作家同士の対談を行う予定が、そこで殺人が起きてしまいます。殺された評論家のテーブルには伏せられた文庫本が…。
なんと林はそのたった一冊の文庫本だけで犯人を推理します。これは驚きです。
このトリックはほんとにできるのかな?と思って、ボールペンを持ち出してやってみましたwで、一回目は本が倒れて失敗。二回目はうまくできました。でも、殺人の後の心境で落ち着いてこの操作ができるのかは疑問です^^;
最後の遊びには、あは、そう来たか、と♪これだけで、読後感が全然違いますね^^

大道芸や手品についての記述が目新しかったので、この路線をもっと追求してほしい気がします。私は見取り図などを思い浮かべるのが苦手なので、ちょっと難しい作品もありましたが、パズラーの好きな方にはおすすめです。



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おおっ、ボールペンでアレをしたのですね!私もそんなに上手く行くものなのかな~と疑問に思ったんですよ。でも、二回目は上手くいったということは、ちゃんと出来るものなんですね。すっきりしました。ラスト1ページにはニヤリ、でしたね^^TBさせて下さい。 削除

2009/6/14(日) 午前 1:07 べる 返信する
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私も掛軸については最初に図がほしかったです。他の作品はある程度想像力で補完できましたが、あれだけは途中までどんなものなのかさっぱり分からなかったので(実際、図を見たら想像してたのとは違ってたし)。
最終話の仕掛けは面白かったですね。私は大の泡坂ファンなのでああいうお茶目なからくりは思いきりツボでした。 削除

2009/6/14(日) 午前 10:25 十兵衛 返信する
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>べるさん
そうなんですよ~。検証あるのみ!と思ってやってみましたw意外と、本に何のあとも残さずうまくできるものです。
文庫本だけで謎解きする展開はなかなかのものでしたね。 削除

2009/6/14(日) 午後 9:07 ねこりん 返信する
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>十兵衛さん
ですよね~^^;そういう世界に詳しくない人には図が頼りですから…。
泡坂さんの作品はあまり読んだことがないのですが、今回の作品のような遊び心が感じられるものなのですね。 削除

2009/6/14(日) 午後 9:10 ねこりん 返信する