ぼくは夜に旅をする  キャサリン・マーシュ

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父親と2人で暮らしているジャックは、交通事故に遭ってから、不思議な物を見たり聞いたりするようになります。ニューヨークに診察を受けに来たジャックは、グランドセントラル駅で、謎の少女ユーリに出会います。

MWA賞の最優秀ジュヴナイル賞を受賞した作品です。雑誌の読書レビューコーナーで見つけました。表紙のイラストに心惹かれ、ネット古書店で探してみたところ見つかりました。実際に見てみると、青いインクのにじみが美しく味のあるイラストだと思いました。

ユーリに連れられて行ったところは、駅に隠された地下九階でした。そこは死者の世界への入り口だったのです。ジャックとユーリは、亡くなったジャックの母親をさがすことにします。地上に思いを残したゴーストは地下世界に留まっていますが、そうでないゴーストは、エリュシオンという安息の地に旅立ちます。母親を見つけることができるのでしょうか?

駅のあるはずのない場所に階段が現れるところなど、ハリー・ポッターを思い起こさせます。また、噴水を通じて生者と死者の世界を行き来する所など、暖炉を通るテレポートを思い出します^^
夜の間だけ地上に出られるゴースト達は、生者に交じって過ごしています。ジェイムズ・ボールドウィンや、アレン・ギンズバーグなど、私も名前を聞いたことのある実在の小説家や詩人、またブルックスアトキンソン(NYタイムズ紙の演劇評論家)などの実在の著名人が出てくるのも、アメリカの読者には面白いところなのだと思います。
ゴースト達は生きていた時と同じように活動したり、酒場にたむろしたりしています。死という重いテーマを扱っている作品ですが、ゴースト達の軽妙さで、暗い雰囲気にならずにすんでいます。
ジャックとユーリは母親についての情報を集めながら、ニューヨークの夜空を飛び回ります。セントラル・パークや公共図書館、マディソンスクェア・ガーデンなど、ニューヨークの名所が次々に出てくるのも楽しめます。

明らかになるユーリの秘密と家族への複雑な思い、ジャックの母親についての謎、ジャックを追いかける死者の世界の番人との攻防も大きな見所です。
ジュヴナイルという体裁ではありますが、大人が読んでもじゅうぶん楽しめるファンタジーだと思います。
ラストはちょっと切ない気持ちになりますが、すでに続編がアメリカでは出ているということなので、今後の展開が楽しみです^^