恋文の技術  森見登美彦

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大学院生の守田一郎は、京都の大学から遠く離れた金沢市の研究所に飛ばされ、そこでクラゲの研究をすることに。周りには何にもない辺鄙な場所で、退屈さを紛らわすために、京都の仲間達に手紙を送りまくります。

相手は同じ研究室の友人、研究室の怖い先輩、家庭教師をしていた少年、作家森見登美彦、妹、研究室の気になる女性などです。
それぞれの手紙がリンクして、一つの出来事を他の面から見られたり、人同士のつながりが分かったりします。何人もの人への手紙を、時間を合わせながら書くのは大変だったと思いますが、そのあたりさすがですね^^
でも手紙の内容自体は、妄想入ったおバカ路線なんですけど…^^;かなり手紙としては失礼な部類に入ると思うんですが、きっと守田のキャラクターは研究室内で確立されてて、憎まれることはないんでしょう(笑)
それにしてもこれだけ○○○いにこだわっている手紙は初めて読みました^^;

一番面白かったのは、憧れの伊吹さんに向けて書いたけど出せなかった、恋文の失敗書簡集です。卑屈になりすぎた手紙や、文語体の手紙、数学用語をやたらに使った手紙、相手を褒めすぎた手紙など、文体練習かのごとく、爆笑ものの手紙が次から次へと出てきます(笑)別の章の他の人への手紙で、伊吹さんに変な手紙を書いてしまったことが出てきますが、実際の手紙を読むと、ここまで変だったのか!とあきれるやら面白いやら^^;各手紙の最後についてる反省文が本質を突きすぎていてまた笑えます。

大文字山への招待状」は、大文字山で赤い風船に手紙をつけて飛ばすイベントについてのお誘いの手紙で構成されています。表紙の赤い風船の絵がちょっと古風でかわいらしいのですが(裏表紙は守田が手紙に埋もれてたりするのですが^^;)このイベントつながりだったんですね。この章のラスト、なるほど、考えたなあと思いました♪

最後の章、「伊吹夏子さんへの手紙」に書かれていた「手紙を書いている間、ポストまで歩いていく道中、返信が来るまでの長い間、それを含めて『手紙を書く』ということだった」という所、そして手紙の楽しさについてのくだりは、とても共感できました。今は手紙を書くということはめったにしなくなってしまいましたが、こうやってブログで皆さんに向けて文章を書いている時も、皆さんからコメントを頂いた時も、手紙の楽しさと共通のものがありますよね^^

木下綾乃さんという方の「手紙を書きたくなったら」という本を持っているのですが、この本を読むことで手紙を書きたくなる素敵な本です。森見さんの本を読んで、また木下さんの本も開きたくなりました^^
恋文を書くことはなさそうですが、しばらく会っていない友達に、たまにはメールではなく直筆の手紙を送るのもいいかも知れません。そんな気持ちにさせられる一冊でした。