訪問者  恩田陸

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実業家だった朝霞千沙子に育てられた映画監督峠昌彦の急死を機に、千沙子が建てた古い洋館には、千沙子の兄弟たちが集まっていました。
そこに、次々に新たな訪問者が訪れます。昌彦の父親探しを中心に、千沙子や昌彦の死の謎も絡んできます。届いた「訪問者に気をつけろ」という警告文の意味は?

警察が介入せず、そこにいるメンバーだけで解決する「クローズドサークル」と言うんでしょうか、その王道といった作品です。雰囲気でいうと「三月は深き紅の淵を」の「待っている人々」に似ている気がしました。
各章に有名な童話の名前がついています。章のイメージに合わせて選ばれているのでしょうが、読んだことがないものもあるので、よく分からないものもあります。最後の「おおきなかぶ」は、「とうとうかぶはぬけました」で、大団円を予想させますね(笑)

洋館に集まったお年寄り達がいい味出してます^^みんな個性的で妙に活気があり、読んでいると年を忘れてしまう感じです。ていうか、お年寄りでなくても良さそうな気もしたんですが、最後にその設定が生かされてるんですね。
警告文のせいで、みんな来客のベルが鳴るたびに身構えるのでこっちも一緒にドキドキしながら読みました。ドアを開ける瞬間の恐怖といえば「バイオハザード」…そこまでじゃないですけど^^;
訪問者をきっかけにさらに新しい謎が提示されます。誰が呼んだのか?屋根から落ちた男の正体は?湖の側にいた女性は誰なのか?隠された宝とは?次々に積み重なって行くのですが、ある訪問者によって、一気に物語は解決の方向へ向かっていきます。○○が探偵役と思っていたらこんな伏兵が^^;
最近の恩田作品では謎の半分くらいはそのまんま~という感じだったのでちゃんと謎が解かれるとおお~という気持ちになりますね(笑)でもあまりにも鋭すぎる推理…というか指摘の連続なので今一つ重みが感じられないのが残念です。天才型探偵におまかせ、という感じでしょうか^^;
最後にちらっと曖昧なところを残しているのは恩田さんらしいですね。

でも、リーダビリティはさすがだし、終盤のどんでん返しも効いてます。今まで「おいおいそこで終わり?」と思っていた読者には一応安心できる内容といっていいと思います^^