夜がどれほど暗くても  中山七里

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政治家や芸能人のゴシップ記事を上げて来た週刊春潮の辣腕副編集長である志賀倫成は、息子がストーカー殺人を犯した上自殺するという事実を突きつけられます。
今までそういった事件を追う側だった志賀は、追われる側となって初めて自分の今までの行動を振り返ります。

 

春潮社のモデルはもちろん文春と新潮でしょう。炎上した春潮48の問題は、新潮45の問題そのままです。
ミステリーと思って読み始めたけれど、出版社の良心を問う一連の内容に多くのページが割かれている事から、中山さんの意図はそこにはない事が分かりました。
なので、犯人特定に繋がる伏線などは一切出てきません。

 

タイトルでだいたいストーリーの流れが見えてしまうけど、半分辺りまで志賀は家庭を失い仕事を失い、世間から糾弾され…とどん底まで落ちる姿が描かれます。 その後は少しずつ光が見える展開に。
被害者の娘である奈々美と加害者家族である志賀が打ち解けていく過程はよく描かれていると感じました。
その過程で志賀に起こることは悲惨としか言いようがないけど、それぐらいの事がないと奈々美が心を許すなんて事はあり得ないだろうから説得力のあるエピソードかも。
8割読んで残りページ数が少ないのに大丈夫?と思ったけど、事件解決は呆気なかったです。まあ、ミステリーじゃないので仕方ないのでしょうか。

 

単行本の表紙は夜(どん底)にいる志賀の姿で、文庫の表紙は夜が明けて光が差し、寄り添う志賀と奈々美の姿という、対になっているのが素敵ですね。

なので上下巻ではありませんが2つの表紙を並べて上げてみました。

 

巻末に西原理恵子さんが解説マンガを寄稿なさってて、新潮社のことや終盤のバタバタ感を西原さんらしい口調で煽っておられたので笑いました。
これを載せるというのも、中山さんに遊び心があるからなんでしょうね。仲良し感も感じられて面白かったです。

 

中山さんの作品は「弁護士御子柴シリーズ」(三上博史さんや要潤さんでドラマ化)の大ファンで、一作目から次が出るのを楽しみにして読み続けています。
他にもいくつか読んでいますが、作品によってタッチがかなり違うので、ある作品を読んで合わないからと読むのをやめてしまうのはもったいないです。
弁護士御子柴シリーズはほんとにおすすめです。