赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。 青柳碧人

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初の青柳さんです。名前の読み方も「あいと」だと初めて知りました。
童話シリーズ、海外版と日本版どちらにしようか迷って、評判のいいこちらにしました。

童話ってけっこう残酷だったり暗かったりするんだけど、そういうブラックな面をミステリーとして生かした面白さがあります。

童話のメインの登場人物が性格悪かったり犯罪者だったり。ヘンゼルとグレーテルのヘンゼルや、マッチ売りの少女とか最悪です。

でも、童話の設定をちゃんとトリックに生かしているのが良かったです。
シンデレラを元にした「ガラスの靴の共犯者」が一番好みの話でした。本来の話で、ガラスの靴だけ魔法がとけないことを、子供心に疑問に思ったものでしたが、ガラスの靴だけ魔法がとける時間が違う設定にして、それをトリックにつなげているのはさすがでした。

ヘンゼルとグレーテルを元にした「甘い密室の崩壊」は、子供の憧れお菓子の家を使った密室トリックです。魔法が使える世界ならではのトリックでした。
お菓子の家は誰でも一度は食べてみたいと思うでしょうが、継母の「野ざらしのチョコレートなんて食べられるもんかい」の一言に「それが現実だよね…」と思わされます。

 「眠れる森の秘密たち」は眠れる森の美女のオーロラ姫消失事件。トリックだけでなく、オーロラ姫に関わる人物の出生の秘密も絡めた盛りだくさんの内容です。

「少女よ、野望のマッチを灯せ」マッチ売りの少女に希望の夢を見せてくれたマッチがここではとんでもないことに。

童話の中の登場人物にもさまざまな厳しい現実があり、それを見据えて生きている探偵役の赤ずきんにリアリティを感じたのでした。