THE やんごとなき雑談 中村倫也

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ダ・ヴィンチでのエッセイ連載をまとめた物です。ダ・ヴィンチでずっと読んでいたけれど、今回新エッセイ&料理の「やんごとなき雑炊」の連載が始まったので、これを機会に読み直してみることに。

中村さんは何をさせても器用な人で、料理、文章、絵、歌、喋り、DIYと、本職以外にも山のようにできる事をお持ちなのです。

 

でも、ご本人も初の連載という事で幾分肩に力が入っていたようで、最初の頃のエッセイは、よく対談などで話されている、売れなかった鬱屈した時代について絞り出すように書かれていて、雑談にしては少々重い。

 

でもそのうち力が抜けて来たのか、家族のいい話が入って来ます。お父さんにプレゼントを買う話が好きです。

中村さんの仕事が順調な事について、お父さんから逆にお礼を言われるのとかほのぼの心温まります。

 

やがて、本当に雑談ぽくなってきて、彼の大好きな生き物についての話も入り始めます。ただ可愛いってだけじゃない、学術的な興味もふまえた生き物との接し方が、私の生き物への興味の持ち方とよく似ていて親近感を持ちます。

猫が飼いたくて仕方がなくなる「ねこ病」は、学術的な興味とは違うけどよく分かるなあ。中村さんは「いぬ病」や他の生き物のことも回ってくるみたいだけど、私は定期的にねこ病を繰り返しております。

 

そのうち、日常や友人の菅田将暉君のことなども書かれ始め、すっかりエッセイらしくなったあたりで終了。

 

文章の上手い人は、まず言葉選びが上手い。彼のエッセイを読んでいるとそう思います。

「田園風景が好きだ。眺めていると、ゆっくりと、ささやかに時間が過ぎていく心地がする」

「ゆっくりと」は誰でも出る言葉だと思うけれど、ここで「ささやかに」はなかなか出てこないと思うのです。こういう言葉が使えること、いいなあと思いました。

 

次の「やんごとなき雑炊」も楽しませて頂いています。