飢渇の人 エドワード・ケアリー

             


アイアマンガー三部作で大ファンになったエドワード・ケアリー。

物に生命が宿るような作者の拘りと、作者直筆の少し怖く味のある挿絵も相まって、独特の世界観を構築しています。


これは日本で初めて編纂されたケアリーの初短編集です。

一作一作に彼らしさが詰まっていて、ケアリーの魅力に惹き込まれること間違いなしです。


全16編のうち、特に印象に残るのは、

「かつて、ぼくたちの町で」

巨大な豪華客船の建造に携わる人々が、船の魅力に魅入られて行く姿を、様々な視点から描いた作品です。

「もっと厭な物語」にも載っていた「私の仕事の邪魔をする隣人たちへ」

隣人を気にし過ぎる男がだんだんとエスカレートしていく様子が恐ろしいです。

「おが屑」

ギリシャ神話を元にした、お互いを心から大切に思う老夫婦の行く末は幸せだったのでしょうね。

「鳥の館」

鳥と機械でいっぱいの館を描いた、ケアリーの真骨頂と言える作品。

登場する大黒椋鳥擬という鳥は、実在の鳥だそうですが、何だか不吉な感じがして印象に残ります。

「パトリックおじさん」

超短編の中では特にユニークな発想が光ります。どれだけ奇抜な挿絵かと思うと、思いの外ノーマルなパトリックおじさんに笑ってしまいます。

「飢渇の人」

犀を心から愛するポールの、その愛情の物語。実在の人物だったとは驚きです。


短編集編纂にあたって、わざわざ書き下ろしてくれた作品もあるそうで、まだまだケアリーワールドには様々な住人が住んでいそうです。

次の短編集が早くも楽しみです。