本からはじまる物語(アンソロジー)

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本や本屋を舞台にした、数ページの掌編を集めた短編集です。トーハンの「しゅっぱんフォーラム」という雑誌に連載されていたものだそうです。
作家さんのラインナップが豪華です。
(恩田陸本多孝好今江祥智二階堂黎人阿刀田高いしいしんじ柴崎友香朱川湊人篠田節子山本一力大道珠貴、市川拓司、山崎洋子有栖川有栖梨木香歩石田衣良、内海隆一郎、三崎亜記)【掲載順、敬称略】  
読んだことがない作家さんもいて、テーマとともに興味を惹かれました^^

特に印象に残った作品を挙げます。
「飛び出す、絵本」 恩田陸
自然の中に棲息している絵本を採集しに行く話です。何だかとても楽しそうで、一緒に網を持って参加したくなります^^でも絵本はハードカバーの大きな本が多いし、ぶつかってくると確かに危ないですね^^;

「招き猫異譚」 今江祥智
京都のある本屋にいる、本を見繕ってくれる猫のお話。実在のイラストレーターさんが出てきます。京言葉と相まって、不思議な雰囲気を醸し出しています。

「サラマンダー」 いしいしんじ
「重い石をひっくり返すように」ゆっくりとページをめくる祖父。その理由は…。
「サラマンダー」とは祖父が少年時代憧れた少女の飼い犬の名前です。でも、その名前に本当にふさわしいのは少女なのかもしれません。

「読書家ロップ」 朱川湊人
題を見て、こちらの方がいしいさんの作品かと思いました^^;
ロップというのは猫の名前です。ロップの愛読書はロシア語の本なのです…(笑)その本の題名が意外で面白いです^^

「迷宮書房」 有栖川有栖
注文の多い料理店」を元にしたユニークな冒険活劇です。有栖川さんらしい遊びがあって楽しいです^^

「23時のブックストア」 石田衣良
同じ書店に勤める青年から告白されるだけの話なのですが、その理由に惹かれました。
本の貸し借りがオリンピックの卓球の決勝戦のよう、というたとえも良かったです(笑)

「生きていた証に」 内海隆一郎
本棚に、いつのまにか差し込まれている自叙伝の小冊子。誰がしているのか突き止めようとしますが…。
展開は予想できるのですが、ラストでじんとしてしまいます。

「The Book Day」 三崎亜記
年に一度4月23日に、持ち主の元を離れ、飛び去っていく本を見送る人々の心情を描いています。本が飛ぶテーマの話はこの本の中にいくつかありますが、この話のイメージが一番鮮烈です。本が飛ぶ理由こそ違いますが、スラデックの「教育用書籍の渡りに関する報告書」の爽やかさに通じるものがありました。

なぜか猫が出てくる話が多く、猫って犬より文学的に見えるんでしょうか(笑)
また、本が羽ばたいたり、本で暗号を作ったりなど似た内容の話もありました。作家さんが本にもつイメージが似通っているからでしょうか?
読書好きの方なら気に入る話がきっとあるでしょうし、共感を覚えるところも多いと思います。おすすめです^^