クライム・マシン  ジャック・リッチー

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2006年の「このミス」で海外部門第一位をとった作品です。その評価通り、軽妙洒脱なクライム・ストーリーに、思わず「おもしろ~い!」と声に出してしまったくらいです。
一つ一つのアイディアが巧妙で、どんでん返しや、オチの意外さ、皮肉さが効いてます。しかもユーモアのある語り口で飽きさせません。表紙のイラストもこの作品の雰囲気にぴったりです。

ずっと読みたいと思っていたのですが、晶文社ミステリのこの本は高くて…。文庫になって良かったです^^単行本に収録されていた「カーデュラ探偵社」シリーズが割愛され、「記憶よ、さらば」が新たに収録されています。「カーデュラ~」は河出文庫で出ることが決まっているそうです。
どれも面白いのですが、14編もあるのでその中からいくつか感想を載せます。

「クライム・マシン」
殺し屋の前に、自分が発明したタイムマシンで殺害現場を目撃したという男が現れます。数々の証拠を突きつけられ、タイムマシンを25万ドルで買うことにするのですが…。
何か仕掛けがありそうだなとは思いましたが、こう来ましたか(笑)小気味よい展開とラスト5行の効果が楽しめます。この一編でもうこの本の面白さは予想つきました^^

「日当22セント」
あやふやな証言のために4年間刑務所に入った男は、出所して銃を買い、弁護士や証言者の所に向かいます。
これはラストにびっくり!男の狙いはそもそもそんなところにあったんですね。

「殺人哲学者」
殺人を思索のために行った男を待ち受けている運命は?
短く非常に切れの良い作品です。思索家ということで現実には疎いようです。肝心なところが抜けています^^;

「エミリーがいない」
MWA賞受賞作品です。アルバートは妻がいなくなったことを不審がられ、妻の従妹に追い詰められるのですが…。
手が込んでますね~。別の意味であくどいです。それにこの男の性格はよく理解できませんね^^;

切り裂きジャックの末裔」
自分を切り裂きジャックの末裔だと思いこんだ患者を診た精神科医は、それを悪用することを思いつきます。
その手口の悪辣さもさることながら、ラストの身の翻し方ときたら…。う~ん悪いヤツです。

「記憶よ、さらば」
記憶喪失に陥った男は自分が資産家であり、しかも強請られていることを知ります。
記憶喪失という設定をこれだけユニークに使える人っていないんじゃないでしょうか。ラストもうまいですね。

「こんな日もあるさ」「縛り首の木」
二編とも、ミルウォーキー警察のターンバックル部長刑事と、相棒のラルフが活躍する話です。自分の推理とは全く別の展開で事件が解決してしまうのですが、お手柄としてなぜか評価されてしまうターンバックルが笑えます(笑)
「縛り首~」の方は、怪奇幻想ぽい、この中では異色の作品です。でも、その方面には全く鈍感なターンバックル…。気に入りました(笑)

「デヴローの怪物」
「不死の怪物」を彷彿とさせる、ある一族にまつわる怪物の物語です。
すべてが明らかになり一件落着と思っていると、最後の一行でどーんと^^;やってくれますね。

気がついたらかなりの感想書いちゃってました^^;
とにかく面白い!読んで絶対お得な作品です。未読の方はすぐに本屋や図書館にGO!です^^