Another  綾辻行人

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肺の病気のために5月になって夜見山北中学に転入してきた榊原恒一は、入った3年3組で、みんなの何かに怯えているような異様な雰囲気を感じます。以前に病院で出会ったことのあるミサキ・メイが同じクラスであることを知りますが、クラスの誰もが、また担任でさえ彼女を無視していることに気づきます。そして一人の少女の死を皮切りに、クラスを恐ろしい死の連鎖が襲います。

この作品はホラー&ミステリと聞いていましたが、「深泥丘奇談」を読んでいないので、綾辻さんのホラーを読むのは久しぶりでした。「眼球綺譚」「フリークス」などは好みの作品でしたが(「殺人鬼」はダメ^^;)これはどんな感じなのかとても楽しみでした。600ページを越える大作ですが、謎が謎を呼ぶ展開で、早く先が知りたくてどんどん読んでしまいました。2日で読みましたが、1日目は150ページまで読み、残りは次の日一気読み^^

学園の中で起きる事件の謎と恐怖という設定と雰囲気が、「囁き」シリーズに近い気がします。メイはクラスに存在しているのか、クラスのみんなは何に怯えているのかということが最初に提示される大きな謎です。友人の勅使河原と望月が榊原に何か言いたいことがあるらしいのだけど、結局はっきりとは言えないあたり、榊原と同じように「いったい何なの~!」とやきもきさせられます。勅使河原って私の中ではなぜか佐藤健くんでした…^^;

綾辻さんは人形というものにかなり関心をお持ちのようですね。今までの作品でも多く取り上げられていますし、この作品の中でも効果的に使われています。確かに人形って美しくもあるし、人に似ていながら命のないそれは、恐怖感を抱かせる存在でもありますね。
メイの造形を人形と絡ませているあたり、ホラーらしい雰囲気作りに一役買っています。

中盤でこの2つの謎が解明してからは、この死の連鎖を断ち切ることはできるのか、クラスに紛れ込んでいるもう一人(Another)とは誰なのか、ということを中心に展開します。今までは完全にホラー的な内容でしたが、ここからミステリ色が強くなります。
「もう一人」については、「ん?」と引っかかったところがあるにはあったんですが…もっとそこを自分で追及するべきでしたね^^;流れに乗って読んでいくうちに忘れてしまっていました^^;
最高潮に盛り上がりを見せたラストシーン、恒一が「もう一人」を前に逡巡する様子はこの600ページを飾るにふさわしい名場面でした。

一つ気になったのは、3組ばかりにそんなに死人が出て、それが過去にも何度もあったということなら、絶対大問題になりますよね。家族ならともかく、生徒自身が何人も亡くなっているんですから、隠しようがありません。これは「正式な学校運営の場」で論議すべき問題でしょう…。親もそんな学校に子供を通学させたくないでしょうし。A,B,C組や教室移動でだめだったのなら、3年生を全部1組と2組にしちゃうとか何かできそうな気がするんですけどね~。人数多すぎて授業が大変とか、死ぬことに比べたら大したことじゃないし。なのに、教師たちがあるまじき行動に賛同しているっていうのが納得できないですね。まあ、そんなこと言ってたら舞台が成立しないので仕方ないですけど^^;
それに、「この年」は終わったけれど根本的な解決はされていないから、今後同様なことが繰り返される危険もあるわけですよね。もう廃校にでもしちゃった方がよさそうです^^;

学校の七不思議、連続死、スプラッター、美少女、人形などホラーによくあるモチーフを用いながら、ミステリとしても完成しているところがさすが綾辻さんです^^ 完成まで三年かかったという渾身の作を堪能しました。



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ねこりんさんいいペースでいってますね。
ホラー&ミステリですか。ちょっとピンときませんね。ホラーというと得体の知れない恐怖とかでミステリと馴染まない様な気もしますがなんだか面白そうではありますね。ちょっと細君の『魔性の子』みたいな雰囲気もあるのかな。 削除

2010/1/11(月) 午後 4:00 きくや 返信する
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600ページという分厚さに相応しいラストでしたよね^^折原一さんの『逃亡者』は「長さの割にそんなラストかいっ」とツッコんでしまいましたが、本書はそういう事がありませんでしたね^^
3組の呪いには、皆さん気になりますか^^;;言われてみれば引っ掛かるんですが、気にしないようにしています(笑)。TBしますね^^ 削除

2010/1/11(月) 午後 6:12 [ 彰信 ] 返信する
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この本の軸はホラーだと思うんですが、ミステリとしての拘りもやはり綾辻さんらしく論理的で素晴らしかったですね。どちらもおろそかにしない姿勢がやっぱ素敵(笑)学校でこれが問題にならないというのはやはりご都合主義でしたよね(苦笑)でも少年の読書傾向とかも好きだったりする部分も多々あり、満足な読書体験となってくれたのでよしとします^^笑 削除

2010/1/11(月) 午後 7:23 チルネコ 返信する
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>きくやさん
設定自体はホラーですが、伏線がきちんとあって、ミステリとしてはしっかりとした作りです。でも私がつっこんだように、舞台設定にちょっと無理がありますが^^;
でもストーリーには引き込まれますよ^^小野さんの「魔性の子」は未読ですが雰囲気似てるんでしょうか。 削除

2010/1/12(火) 午前 0:01 ねこりん 返信する
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>彰信さん
読み応えのあるラストでしたね^^ここまで読んできてよかった、という満足感が得られました。
舞台設定については、一応気になることは書いてみましたが、ホラーなんで仕方ないかな、というところも^^; 削除

2010/1/12(火) 午前 0:06 ねこりん 返信する
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>チルネコさん
じわじわ高まる不安感というホラーらしい雰囲気はさすがでした。メインのミステリ部分はしっかりと作られていましたが、他のことはホラーなんで何でもあり、みたいな感じもしましたが^^;
キングとクーンツが出てきたところは私も嬉しかったです^^ 削除

2010/1/12(火) 午前 0:27 ねこりん 返信する
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確かにツッコミ所は満載だったのですが、面白かったからいいやって感じでした(苦笑)。
綾辻さんはおっしゃる通り、人形にはとても拘りのある方です。人形作家さんとも交流が深かったりするし。『人形館』を書かれたくらいですものね。
暗黒館の8年に比べると、3年なんて少ない少ない(笑)。生みの苦しみも1/10位だったんじゃないでしょうか(苦笑)。 削除

2010/1/12(火) 午前 0:56 べる 返信する
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みなさんツッコミどころがあるんですね。自分の鈍さに乾杯(笑^^;)ホラーとミステリーの融合ものは、どうしても真相シーンで雰囲気が壊れる傾向があるのですが、綾辻さんはそれがないから好きです^^ 削除

2010/1/12(火) 午前 1:07 ゆきあや 返信する
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>べるさん
「暗黒館~」って8年もかけて書いておられたんですか?通りで長いはずですね^^;館シリーズは前にはまって続けて読破しましたが、「びっくり館」と「暗黒館」は読んでないのでいつか読みたいです。 削除

2010/1/12(火) 午後 7:49 ねこりん 返信する
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>ゆきあやさん
いえいえ、純粋に楽しんだゆきあやさんの方が良い読者です^^
でもストーリー的にはほんと引き込まれたし、ラストまで中だるみなく読めました。ホラーとしてもミステリとしても成功していたと思います。 削除

2010/1/12(火) 午後 8:00 ねこりん 返信する
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ねこりんさんの「廃校にでもしちゃったほうがよさそうです」に爆笑^^また来年同じようなことの繰り返しになるとしたら行き着く先は廃校でしょう。生徒たちの噂話だけに留まるならともかく、先生まで一緒になってというのは私も不快感でいっぱいでした。いや、それでも面白くて好きな作品なんですけどね^^ 削除

2010/1/15(金) 午後 10:54 紅子 返信する
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>紅子さん
母親の頃からの事件ですから、もう遅きに失してますね^^;ホラーなのでかなりそのあたりの制約は緩いんでしょうね。
でもリーダビリティはさすがでした。 削除

2010/1/16(土) 午前 0:25 ねこりん 返信する
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さすが綾辻さんの作品は 舞台設定が凝っていますね。人形ももう少し絡んでくるかなと思っていたのですが^^;
確かにこの学校、廃校にしちゃったほうがいいかも(笑)
ちょっと「六番目の小夜子」に出だしが似ていたような気がします。比べちゃうと恐怖では負けてるかな^^。
ボーイミーツガール的なところはよかったですね。 削除

2010/9/25(土) 午後 8:12 しろねこ 返信する
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>しろねこさん
雰囲気作りのうまい作家さんですよね。いろいろ内容について本気で考えてしまうのも、綾辻さんの狙い通りなのかも(笑)
六番目の小夜子」も似ている所がありますね。学園ホラーって、なまじリアルさを出そうとするとかえってあらが目立つので、全くあり得ない設定にした方がいいのかも知れません。 削除

2010/9/26(日) 午後 3:16 ねこりん 返信する