私の家では何も起こらない  恩田陸

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「幽」連載の、丘の上に立つ幽霊屋敷をテーマにした連作短編集です。私は最初は日本が舞台だと思って読んでいたのですが、小道具の数々を見るとどうやらイギリスのようです。

「私の家では何も起こらない」
以前叔母が住んでいた家に住むことになった作家の元を、ある男が訪ねます。男はこの家で起きた様々な事件について話して聞かせるのですが、彼女はまるで気に懸けない様子です。
「生きている人間の方が恐ろしい」という言葉をそのまま作品にしたという感じです。衝撃的な出来事が語られるのに、ゆったりとした時が流れているような雰囲気が不気味です。

「私は風の音に耳を澄ます」
タイトル作に出てくる事件について、この作品から一つずつ、一人語りの形式で詳しく語られていきます。
でも、ある事についてすっかり忘れて読んでいたので最後にギョ!とさせられました^^;

「我々は失敗しつつある」
幽霊屋敷のマニアらしき三人の男女と、丘の上の家を訪れることになった男のてん末。
現実なのかそうでないのか、境目が曖昧な表現が不思議な余韻を残します。

「あたしたちは互いの影を踏む」
双子のようにそっくりな老姉妹の間に起きた惨劇の理由は?
因果応報ってこういうことを言うんでしょうか。なるべくしてなった、という感じですね。

「僕の可愛いお気に入り」
丘の上の家に住む少女と対話する少年は、話すことで心の安らぎを得ていました。
少年の心の闇と少女が呼び合い一つになろうとする展開が恐ろしく、またやるせないです。

「奴らは夜に這ってくる」
「僕の~」から数十年?たったあとのお話です。「這う奴ら」とはいったい何なのか…。
何だかこれに設定が似た漫画を読んだ気がするのですが…。それを思い出して背筋がぞっとしました><

「素敵なあなた」
この家の幽霊屋敷としてのスタートを切った?そもそもの物語です。
う~ん何とも気の毒な話ですね。でもラストの感じだと、もう思いを残すこともなさそうです。

「俺と彼らと彼女たち」
幽霊屋敷として名高い丘の上の屋敷を修理することになった大工たちですが、一人は恐怖のあまり逃げようとしてけがをしてしまいます。その代わりに語り手の大工の父親がやってきますが…。
幽霊に真面目に話しかける父親のキャラクターが面白いです^^ テンポが良くコミカルな展開も他の作品とは違う雰囲気で楽しめました。

「私の家へようこそ」
丘の上に住む何人目かの住人が、友人を招いて家について語ります。
最初に出てくる人とは話し方も雰囲気も違うので、たぶん違う人なのでしょうね。知らず知らずのうちにこの家の怪異の影響を受けているところがぞっとするところでもあるし、それに気づいているのかいないのか、受け入れて暮らしている住人がユニークでもあります。

「附記・われらの時代」
今までの物語を読んだ人が書いた附記という形式で書かれています。
恩田さんが物語で言い足りなかったことをここで述べたという感じがします。恩田さんの幽霊感がどういうものか分かります。

古典的な幽霊譚ではあるのですが、それに恩田さんらしい解釈が加えられ、雰囲気のあるものになっています。やはり恩田さんはこういう形式のものは巧いですね。そして忍び寄ってくるような怖さもあり、ホラーとしても成功してると思います。
恩田さんファンも、そうでない方もぜひ読んでみて下さい^^



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もう少しで読むので、ざっと斜め読みしました^^読み終わったら駆けつけますね^^
それにしても、表紙はやさしそうなのに中身は怖いんですね~。このギャップ感はいったい……。 削除

2010/3/14(日) 午後 3:30 [ 彰信 ] 返信する
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私もイギリスっぽいなーと思いながら読んでました。久々にヒットの恩田作品が読めて嬉しかったです。ただ、個人的に附記は蛇足に感じたのですが・・・。『私は風の音~』と『俺と彼らと~』が好きでした。 削除

2010/3/15(月) 午前 1:27 べる 返信する
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>彰信さん
表紙もよく見ると、イギリス的な落ち着きの中に黒い窓がぽっかりと口を開けていて、内容を暗示している気がします。
感想楽しみにしていますね^^ 削除

2010/3/15(月) 午後 7:15 ねこりん 返信する
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>べるさん
恩田さんはきっとどうしてもあれが言いたかったんでしょうね。でも「私の家へ~」で終わった方がやはりすっきりしていますね。
私もべるさんが挙げられた二作品が好きです^^ 削除

2010/3/15(月) 午後 7:52 ねこりん 返信する
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こんにちは。久しぶりに覗きました~~。。

面白そうですね。。気になるかもです。。これ
図書館でももう 貸し出しされてるヤツですか?
^^ 削除

2010/3/16(火) 午後 2:24 [ 空雪 ] 返信する 内緒
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>内緒さん
私も図書館で借りました。田舎の図書館なので2番目に借りられました^^面白いのでぜひ読んで見て下さい。 削除

2010/3/16(火) 午後 8:02 ねこりん 返信する
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本書、とても恩田さんの持ち味が生かされていて、楽しめました。
よぉ~く、考えると、とっても怖かったりするんだけど、さらっ~と読ませてしまううまさに感服。
トラバさせて下さいね。 削除

2010/3/23(火) 午後 5:34 金平糖 返信する
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金平糖さん
ぞ~っとする話もありましたが、コミカルな話もあって緩急がありましたね。恩田さんは短編の方が持ち味がより発揮できているような気がするのですが。 削除

2010/3/23(火) 午後 8:08 ねこりん 返信する
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読了しました^^
2作目が1番好きですね、ねこりんさんみたいにギョ!となりました(笑)。最後の附記は、少し急ぎ目で読んだので混乱しちゃって……何を書いているのか、あまり理解できませんでした^^;(おい)
TBしますね^^ 削除

2010/3/24(水) 午後 5:50 [ 彰信 ] 返信する
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>彰信さん
やっぱりギョ!となりましたか(笑)一つの幽霊屋敷を舞台にした連作というのはユニークな形式でしたよね。タイトル作の事件がだんだんと明らかになるのも巧いと思いました。 削除

2010/3/26(金) 午後 10:16 ねこりん 返信する
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ギョ!て(笑)。確かにビビリました。語り手が違っていくのが良かったですね。こういう雰囲気のホラーはなかなか他で読めないので良かったです。ねこりんさんは、最後の付記についてはどういう印象を持ちましたか? 削除

2015/2/9(月) 午後 0:44 ゆきあや 返信する


>ゆきあやさん

コメントコピー中に、返事してないコメント見つけて、4年ぶりにお返事します^^;遅くなってすみません。
やっぱりギョ!ですよね。でも、何がギョ!だったか4年も経つとうっすらとした記憶しか^^;
附記も忘れたけど、記事に書いてることが全てだと思います。 削除

2019/3/10(日) 午後 4:50 ねこりん 返信する