蝦蟇倉市事件2(アンソロジー)

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架空の街蝦蟇倉を舞台に起こる不可能犯罪を描いた競作アンソロジーの第2弾です。
前作は道尾さんや伊坂さんの作品でおおいに楽しませてもらいました。今回は北山さんや米澤さんの名前があり、期待大でした。

「さくら炎上」 北山猛邦
たった一人の友人陽子が殺人を犯すのを目撃した主人公は、それを隠すために死体を埋めてしまいますが…。
動機に啞然とさせられます。雰囲気としては桜庭さんの「少女には向かない職業」のような感じです。北山さんの作品は音野順シリーズしか読んでないので、こういう作品も書かれるんだなと思いました。

「毒入りローストビーフ事件」 桜坂洋
レストランで食事中に突然死した男の死の真相を巡って、3人の男女がお互いを犯人だと指摘する理論を展開します。
う~ん^^;話が意味なく脱線するので読みにくい上、ラストは「え、これで終わり?」でした^^;リドル・ストーリーのつもりで書かれたのでしょうが、読者に推理や想像する余地がない(というかする気にならない)作品でした。

「密室の本―真知博士 五十番目の事件」 村崎友
蝦蟇大に通う古城と藍は、先輩の部屋に招かれます。貴重な本を渡す代わりに、用意した謎を解くように言われて訪れたのですが、部屋の中で先輩は亡くなっていました。二人は不可能犯罪課の真知博士とともに事件の調査をすることになります。
ふすまの中の本についてのトリックは面白かったです。でも、○○○○でそんなになるというのは納得いかないですね~。実はうちのふすまもそれで開きにくくなることがあるんですが、見た目で分かるほどではないと思います。
ラストはけっこうびっくりしたし、終わりの一行も決まってました。

「観客席からの眺め」 越谷オサム
人気教師の死と十王環命会との関わりは?
最初から最後まで嫌な話ですね~。あまりコメントしたくないくらいです。大勢の生徒から慕われる教師が、そこまで嫌な人間だったっていうことあるんでしょうか…。高校生だったら見て取りそうな気もするんですが。

「消えた左腕事件」 秋月涼介
美術館で男が殺され、その左腕とそばにあった絵の左腕が切り取られる事件が起こります。しかし、美術館にいた人達が腕を持ち出した形跡はありません。腕はどこに?
これも真知博士出てきます。妙に来館者の移動時間が詳しく載ってるなと思いましたが、これはトラップだったんですね^^;左腕の消失については意外でした。読み終わって思ったんですが、村崎さん、越谷さん、秋月さんの作品は共通点ありますよね…。

「ナイフを失われた思い出の中に」 米澤穂信
妹の知り合いに会うために日本を訪れた男は、彼女からある悲惨な事件の話を聞かされます。読んでないですが、「さよなら妖精」の番外編だそうです。
淡々として硬質な文体は異質な感じがします。事件の真相もやり切れない内容で、私が今まで読んできた米澤さんの作品とは違うなと思いました。

北山さんと村崎さんの作品が良かったと思います。2の方が評判が良いという噂も聞いたのですが、私は断然1の方が好きですね~。せっかく「蝦蟇倉市」という町を設定したのだから、その設定を生かした作品にしてほしかったのですが、2では別に蝦蟇倉市じゃなくてもいいんじゃない?という作品もありました。
あと、2は読後感の良くない作品が多かったですね。1はなかなかバラエティに富んでたし、伯方さんの作品などいい味出してたと思います。2も期待してただけに、ちょっと残念でした。