モダンタイムス  伊坂幸太郎

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SEの渡辺は、失踪した同僚五反田が取り組んでいた出会い系サイトに関するシステムを引き継ぎます。同僚の大石とエラーの原因を探っているうちに、そのプログラムが、ある特定の言葉を検索した人間を追跡するようになっていることに気づきます。そして、実際にその言葉を検索した人間に危険が…。

あとがきにもあるように、「ゴールデンスランバー」と並行して書かれたということで、似ている点が見られます。簡単に言うと、大きな陰謀に巻き込まれた人間が、どうやって危機を乗り越えるかという設定が同じです。


少しネタバレありです。





「モダンタイムス」で繰り返し語られるのが「システムの中の部品」という言葉です。部品一つ一つの動きが連動して大きな機械を動かす、つまり一人一人の思惑が絡み合って国家や世界を動かすということです。
ですがそれは、個人の責任意識を失わせ、「上に命令されたのだから自分が悪いのではない」と思う危険もはらんでいます。

渡辺の妻佳代子は、浮気を疑って夫を拷問して真偽をただすような怖い人ですが、今ある問題についてできることをするという行動力をもっています。
作中の作家井坂好太郎は、「小説で世界を変える」と思って書いていたのを、「どこかの誰か一人に」という思いで書くことにします。
安藤潤也と詩織は、巨額の資金で世の中を良くしようとしますが、そのうちに目の前の困っている人を助けるために行動するようになります。
漫画家の手塚は、詩織というたった一人のためだけに作品を描きます。
そして永嶋丈も…。

これらのモチーフが、すべて、「大きな目的よりも小さな目的のために」ということにつながっています。「部品」とされた個人が国家のような大きな物を支えるためだけに動くのではなく、自分をしっかりと持って、考えて行動しろということなのです。これは「魔王」のテーマそのものです。

「魔王」の続編でありながら、共通の登場人物が活躍しないことに物足りなさを感じていましたが、底辺に流れるものは同じだったんですね。

「魔王」の方が、安藤兄弟対犬養という対決の図式がはっきりとしているので分かりやすいし、納得できる内容になっている気がします。「モダンタイムス」は播磨崎中学校事件の真相こそはっきりしますが、何か釈然としないものも残ります。
ですが、この作品のテーマを考えると、何もかも明白になるということは必要ないのでしょうね。

カバーデザインはテーマに合ったもので(通常版)気に入っています。作品としては好きといえるほどではありませんが、読み応えはあると思いました。



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だいたい自分も同じような感想を持ったようです。テーマは分厚くなって読みごたえ十分でしたね。好きかと言われると伊坂作品では真ん中より下くらいかもしれないですけど^^;削除

2008/10/27(月) 午前 4:02ゆきあや返信する
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井坂好太郎の言葉がこの作品のテーマを的確に語っていたように思います。安藤潤也のことがもう少し語られてもよかったように思うのですが・・・
カバーデザインは通常版の方が圧倒的にいいですね(苦笑)
トラバさせてください。削除

2008/10/27(月) 午前 9:27[ テラ ]返信する
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早くもお読みになられたのですね。

>「部品」とされた個人が国家のような大きな物を支えるためだけに動くのではなく、自分をしっかりと持って、考えて行動しろというこということなのです
ふむふむなるほど。納得です。
順番はもうしばらく回ってきそうにないのですが、楽しみに待つことにします^^削除

2008/10/27(月) 午前 10:28ラブリ返信する
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>ゆきあやさん
なかなか考えさせられる作品でした。でも、「魔王」の方が私は好きです。「魔王」の高まる危機感や、「呼吸」の静謐さに惹かれます。削除

2008/10/27(月) 午後 7:40ねこりん返信する
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>テラさん
井坂好太郎、不思議なキャラでしたね。この人のことをずっと渡辺と同じ目線で見てしまいました。
安藤潤也と犬養の関わりについては、もっと詳しく知りたかったですね。削除

2008/10/27(月) 午後 7:49ねこりん返信する
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>ラブリさん
一つのテーマに向けて、多くの事柄が収束していく様子はさすが伊坂さんだと感じました。でも、伊坂さんらしい爽快さがもっとあればなあ…と思います。削除

2008/10/27(月) 午後 8:00ねこりん返信する
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考える余地を残してくれる作品が好きなので、その点でこの作品は非常に満足させられました。「何もかも明白になるということは必要ない」と私も思います。削除

2008/10/28(火) 午前 2:06よも返信する
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>よもさん
伊坂さんの作品は、読み終わった後、その世界にひたったり、いろいろ考えを巡らせたりしてしまいますね。
明白と言えば、犬養はフルネームで出てきたのに安藤兄は結局下の名前分からないままでしたね^^;削除

2008/10/28(火) 午後 7:57ねこりん返信する
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こんばんは。
本の厚さを表現したかったのですが比較対象がなかったのでいまいち伝わりにくい感じですね・・・文庫版「魔王」と一緒に写せば良かったかな?

「SOSの猿」僕も読んでます。これからの展開が楽しみですね。削除

2008/10/29(水) 午前 0:30[ アル・アル ]返信する
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>アル・アルさん
比較対象はやっぱり通常版がベストですが無理ですね^^;
「SOSの猿」切り抜いて保存してます^^ある程度たまったらまた読み直してみるつもりです。削除

2008/10/29(水) 午前 1:21ねこりん返信する
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ども、遊びに来てくれてたみたいで!ありがとう!!

読書好きのようなので、よかったらオレの作品についても
気軽にコメをしてもらえるとウレシイなぁ☆
これを機会に仲よしさんになれたらいいね♪削除

2008/10/29(水) 午前 2:47凛 七星返信する
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ねこりんさんが言うとおり「魔王」に比べ渡辺たちが立ち向かう相手(もの?)が不明瞭だったかもしれませんね。
不慮の事故で起こってしまった大量虐殺から英雄を作り出すという過程も何故国にとって必要なのか、ちょっと納得しかねる部分ではありました。自分としても「好き」というよりも読み応えのあった作品といった感じです。削除

2008/10/29(水) 午後 11:34hayaton返信する
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ニーチェさん
単に感想書くのと、新たに物語を紡ぐのとでは大きな違いがありますね~。
小説の書ける人は本当にすごいと思います。がんばって下さいね^^削除

2008/10/31(金) 午後 10:03ねこりん返信する
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>はやとんさん
結局国家っていうもの自体、下からはうかがい知れない、わけの分かんない物ってことなんでしょうか^^;
でも、国の思惑って結局誰の思惑なんだろうな~って思うことはあります。削除

2008/10/31(金) 午後 10:21ねこりん返信する
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私は『魔王』がとても不満が残る作品だったので、それよりはこちらの方がわかりやすかったかな、と思いました。何か、痛いとか怖いとか、負の感情の方が大きくて、大部分は顔をしかめて読んでいたような気がしますが^^;キャラは伊坂さんらしくて良かったですけどね。TBさせて頂きますね。削除

2008/11/1(土) 午前 1:00べる返信する
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>べるさん
気持ちのいい話ではなかったですね^^;読んだなあ~という感じはしましたが。
「魔王」の方が、いろんなイメージが喚起される気がしました。でも書かれなかった部分が「モダンタイムス」で少しは分かるかと思っていたけど、ほとんど分かりませんでしたね^^;削除

2008/11/1(土) 午後 8:09ねこりん返信する
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連載者の単行本化なので、伊坂作品の醍醐味である小さな仕掛けが絡み合い最後に大爆発的な盛り上がりが無かったことが少し不満でしたが、作品としては読み応えがありました。
トラバさせて下さいね♪削除

2008/12/2(火) 午前 8:23金平糖返信する
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金平糖さん
連載となると、構成とか難しそうですよね~。
「SOSの猿」も、これどうやって収拾つけるのか心配な感じです^^;削除

2008/12/2(火) 午後 7:33ねこりん返信する
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『魔王』は未読なのでねこりんさんの言うところがちゃんと把握できてないのが残念~^^。背景がよくわからないモノも多く、ちょっと不満でもありました(苦笑)でも、伊坂語録はそれなりにひびくものもありましたが、どうもここ2、3作の伊坂作品は僕にはあまり合わなくてショックです(泣)でも、読み続けますが^^w削除

2008/12/3(水) 午前 1:33チルネコ返信する
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>チルネコさん
「モダンタイムス」は好きな作品とは言えませんが、「ゴールデンスランバー」は好きです^^
ここ2,3作っていうのは読んだ順番で、でしょうか。「ゴールデン~」の前の「フィッシュ・ストーリー」は素敵な作品集でしたよ^^削除

2008/12/3(水) 午後 7:37ねこりん返信する
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私も「ゴールデン」とかの、パンパンッとストーリーが展開していきながら、最後に伏線が見事に収まるって形が好きですね。
こういう伊坂さんも、アリだとは思うし、面白くないわけではないんだけど…ね。
TBさせてくださいね♪削除

2008/12/7(日) 午後 0:36チュウ返信する
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>チュウさん
「ゴールデン~」はラスト近くの2つの台詞が見事に決まってますよね~^^これほど着地の美しい作品はなかなかないと思います。
「モダンタイムス」もよくできた作品ではあるんですが…。削除

2008/12/7(日) 午後 2:55ねこりん返信する
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「魔王」と「ゴールデンスランバー」を足して2で割って無難に纏まったという感じは否めませんね。
まぁ私的にはストーリーに関係なくツボる部分があったので楽しめましたけど(^^)
何気ないセリフは伊坂さんらしい小技が効いていて好きでした。
トラバ出来ないのでまた日を改めて再挑戦させて下さいネ☆削除

2009/1/22(木) 午前 1:06[ chi*on*ne*ao ]返信する
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>ぐぅさん
気の利いた台詞やラストの爽やかさは伊坂さんらしかったですね。
新聞連載の「SOSの猿」はとても変わった話で、どんな展開を見せるのかどきどきする…というか心配です^^;削除