ニッポンの嵐

国土交通省観光庁が進めている観光立国教育に賛同した会社が企画・製作した本です。嵐は「観光立国ナビゲーター」という、日本観光の顔として選ばれていたようです。、嵐のメンバーが実際に全国の各地を訪れて、その地域の魅力や地域社会の課題に触れ、そこで体験したり感じたりしたことをまとめた内容になっています。この本は図鑑ぐらいのサイズの立派な体裁で全198ページ、全編嵐が満載ということで、ファンとしてはぜひ手元に置きたい本だろうと思いますが、何と非売品なのです。とあるルートで読む機会を得ました。最近TVで彼らの姿を目にすることが多くなり、何となく親しみを感じていたところでした。そこでパラパラとめくってみると、嵐というだけでなく、非常に真面目な趣旨の本だと感じたので、真剣に読んでみることにしました。

まず、トップバッターは大野君です。芸術家として個展を開いたり作品集を出したりということでも有名な彼ですが、尊敬する芸術家の奈良美智さんの故郷、青森県弘前市を訪れていました。
奈良さんの展覧会を開催したスタッフたちから思いを聞いたり、奈良さんの作品に触れたりして、素直に喜びを表す大野君の表情が印象的でした。奈良さん製作の巨大な犬のオブジェに登った写真が面白かったです。体験した木のスプーン作りや、刺し子の作品作りなど、さすがに大野君の作品はセンスがいいですね。ものづくりに意欲を燃やす人々と大野君の姿が重なって見えました。

相葉君は、千葉、神奈川、京都、奈良と4つの県を巡り、福祉、介護施設を訪れました。高齢者の介護をしているスタッフの方たちと話して、「~のために」ではなく、「ともに」やっていくことが大切だということに気づかされます。確かに「ために」という言葉には、「やってあげてる」というニュアンスが感じられますよね。
他にも、高齢者向けの宅配サービスをしながら写真を撮っている人や、障害者の方がものづくりの活動を行っている施設を訪れます。おじいさんやおばあさん、障害者の方の笑顔も素晴らしいですが、接している相葉君の表情がまた優しいのです。

松本君は、島根県隠岐島へ。ここで、観光甲子園に出場して全国大会で優勝した高校を訪れ、彼らと、支えるスタッフの熱意を感じます。名所を訪ねる観光ではなく、人との関わりを重視したプランが斬新だと思いました。松本君にとってもそれは同じだったようです。また、メインのスタッフが隠岐の人ではなく、この島の魅力に惹かれて飛び込んできた人達だというのも驚きました。他から来た人の方が、よりこの島の良さに気づくことができるのかも知れませんね。島の新鮮な海産物もおいしそうな旅でした。

櫻井君は奈良県で、お茶作りをしている青年に会います。15で農業を志し、高校に通いながら自然農塾に入り、畑を借りて農業を始めます。放置されて伸び放題になったお茶を伐採することから始め、今では5トンも採れる畑を所有しているそうです。櫻井君も実際に茶畑に行って茶葉を刈る作業や、樹形を整える作業をします。何しろ広いので、一列やるだけでも大変な作業です。櫻井君は一列の端まで着いたとたん、その場にへたり込んでしまったそうです。自分で収穫して手もみして作ったお茶はとってもおいしそうでした^^櫻井君はキャスターなので、コメントをすごくしそうな気がしてたのですが、嵐五人の中で一番聞くことに徹していることに驚きました。聞き上手なんでしょうね。

二宮君は、ゲームとアニメ大好きということで任天堂、そしてスタジオジブリを訪れました。スーパーマリオを作ったクリエイターやスタッフの方々に会い、マリオを作った時のアイディアや、ゲーム音楽作りの苦労を聞きます。マリオがイタリア系アメリカ人っていうのは知らなかったです(笑)キャラデザインも、機能的な面が先っていうのが当時の技術を物語ってますね。さすがに二宮君はゲームに詳しいだけあって、質問も的確な感じがしました。
宮崎駿さんや「借り暮らしのアリエッティ」の米林監督との対談では、アニメって夢を与える仕事だけど、制作者側は戦争なんだな~と。とにかく制作への厳しい姿勢と現場の様子が感じられました。ちなみに二宮君が一番好きなジブリ映画は「耳をすませば」だそうです。

全編を通して感じたのは、日本の文化って、当たり前ですがさまざまな仕事によって支えられているということ、そしてその文化は、人と人とのつながりによって生まれているということです。それぞれの地域で活躍している人々の姿からは、「自分がやらなくて誰がやる!」というような熱意とパワーが伝わって来ました。嵐のメンバーが地域の人々と関わって、得た物は大きかっただろうと思います。嵐と共に、日本の良さを再発見することが出来た素敵な本でした。