まほろ駅前多田便利軒  三浦しをん

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直木賞を取った有名作です。瑛太松田龍平で映画化が進められていることを知り、瑛太ファンである私は映画を見る前に読んでおかないと…と思って手に取りました。
便利屋「多田便利軒」を営む多田啓介は高校の同級生だった行天春彦と偶然出会います。どこにも行く当てのなかった行天は多田便利軒に転がりこみ、多田と生活と仕事をともにすることに。

几帳面で仕事はきっちりとこなすタイプの多田と、自分勝手で面倒くさがりのトラブルメーカーである行天のコンビが笑えます。行天が抱えてきたトラブルを多田が雑巾持っておいかけるみたいな感じです^^;多田は行天に出ていってほしいと思いながら言い出せず、そのうち行天のいる日常が当たり前になっていきます。

二人ともバツイチ同士、過去に夫婦や親子関係に関わるトラウマを抱えています。また、行天のあることについて多田には負い目がありました。多田便利軒の請け負う仕事の内容と関わらせながら、少しずつ二人の過去が明らかになっていく展開が巧いです。

特に、両親に愛されずにいる少年由良に対し、多田が

「だけど、まだだれかを愛するチャンスはある。与えられなかったものを、今度はちゃんと望んだ形で、おまえは新しくだれかにあたえることができるんだ。そのチャンスは残されてる。生きていれば、いつまでだって。それを忘れないでくれ」

と語りかけた言葉には胸を打たれました。多田は自分で話しながら、行天はその言葉をそばで聞きながら、それぞれ思うところがあったのではないでしょうか。

自分で過去とは折り合いをつけようとしているらしい行天と、過去に苛まれる多田ですが、出来事を通して多田も少しずつ自分について語れるようになり、癒されていきます。最後の章で、血が繋がっていなくても親子としての愛情は揺るがないことに多田がホッとするシーンでは、「重力ピエロ」で泉水の父親が「俺たちは最強の家族だ」と断言した時のような安心感を感じました。

読んでみると、二人のキャラクターは中年、と言っても良い気がします。便利屋というフットワークの軽そうな役でそれなら若くてもいいかなと思っていましたが、意外と重いテーマを含んでいることを知り、まだ20代の瑛太松田龍平が演じきれるのかちょっと心配です。

その他のキャラクターで気に入ったのは自称コロンビア人娼婦のルルちゃんです。私が思い浮かべたのが漫画家の浜田ブリトニー。テンションがそんな感じです(笑)でも、チワワをかわいがってくれてるし、突然開いてくれたクリスマスパーティといい、きっと気だてはいいんでしょうね^^

今回登場した人物達が再び活躍する「まほろ駅前番外地」も面白そうです。まだ文庫になってないのが残念ですが…図書館にあるようですので借りてみようと思います。