ふたりジャネット  テリー・ビッスン

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奇想コレクション」の一冊です。ビッスンでは「平ら山を越えて」もこのシリーズの最新作で出ています。あとがきを読むと、「平ら山~」の表題作は、「ふたり~」に収めたかったものの紙面の都合で載せられなかったものらしいです。つまり、「ふたり~」が出たときには、シリーズのラインナップはまだ決まってなかったんですね。

「熊が火を発見する」
ヒューゴー、ネビュラ、ローカス賞を始め、数多くの賞を取った作品です。
火を発見したおかげで冬ごもりをしなくなった熊たちと、老いた母親とその息子との交流を描いた物語です。特に大きな展開があるわけではありませんが、死を前にした時間のしみじみとした静けさと温かさを感じます。

「アンを押してください」
ATMが現金の預け払いとは全く関係のない、天気予報や質問をしてくるワンシチュエーションコメディです。「アン」が何なのか最後の一行まで分からないのがミソです。

「未来から来たふたり組」
未来から来た2人組に、将来偉大な画家になることを告げられたテレサは、その代表作を無事描き上げることができるのでしょうか?これもちょっとドタバタ入ったラブコメですね^^;

「英国航行中」
英国を航行するのではなく、英国そのものが航行する話です^^;アイルランドはついていかないとか、国の事情が影響しているのがおかしいです(笑)主人公が読んでいる実在の小説の出来事が並行して出て来ます。イギリスらしく何となく優雅な雰囲気さえ感じる物語です。

「ふたりジャネット」
ケンタッキーの田舎町オーエンズボロに、アップダイクを始め次々に有名作家が引っ越してきます。アメリカ文学好きなら出てくる作家の名前だけで楽しめるでしょう。SF作家で唯一トマス・M・ディッシュが挙がってますが、「本当の有名作家じゃない」と言われてるのが^^;

「冥界飛行士」
これだけが他とは違い、暗いトーンを放つ異色の作品です。死後の世界を体験する実験に参加した男が同行した女性と死に魅入られていく様子を描いた物語です。死後の世界のイメージが多分にSF的です。

「穴のなかの穴」
廃車置き場に部品を探しに行ったアーヴと友人のウーは、古タイヤ処分のための穴が驚くべき場所につながっていることを知ります。
「万能中国人ウィルスン・ウー」のシリーズ第一作です。読み始めると車の部品と車種についての話が続くので眠くなってきたのですが、やっぱりちゃんと読もうと思って最初から気合いを入れて読み直すと、途中から変な展開になってきて、もう爆笑(笑)ウーの言ってる理論や数式は全くわけが分からないのですが、アーヴはいかにも分かってるように相槌を打ってて、それで話が通じてます(笑)アーヴが何気なく口にしたり発見したりした物事が、世界や宇宙を変えるような大きな現象になぜかつながっているのがおかしいです。それはこの次に続く話でも同様です。挫折しなくてよかった~^^

「宇宙のはずれ」
アーヴが何気なく注目した、捨てられたビーズのクッション。それが暗示している現象とは?一方でアーヴは婚約者のキャンディと、老人ホームにいるキャンディの父親を見舞いますが…。
ウーが言っている壮大すぎる現象が、実は身近な物事に影響を与えることになり、そのためにアーヴは困ったことになります。解決方法が妙に単純でバカバカしく、そんなことで宇宙の大問題が解決していいの?と思わせるところも笑えます(笑)漢字や英単語の入った変な数式、何なんでしょう^^;

「時間通りに教会へ」
キャンディと結婚することになり、婚前ハネムーンにでかけたアーヴですが、式に出席するウーと電話で連絡を取っているうちにまたまた怪現象が…。ウーがジャングルで「バタフライ効果」(「アマゾンを舞う1匹の蝶の羽ばたきが、遠く離れたシカゴに大雨を降らせる」という比喩。いろいろな言い方があるようです)を実際に試してるとは…蝶じゃなくて蛾ですけど(笑)これも宇宙的怪現象を引き起こしてる物が、え、そんな物?というギャップが楽しめます^^

「ウィルスン・ウー」のシリーズが面白すぎます^^このシリーズもっと読みたいです。どの作品も発想の妙と展開のユニークさが光ります。奇想コレクションの中でもかなりおすすめ作品になりました♪