BUNGO -日本文学シネマ- グッド・バイ  監督 篠原哲雄

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山崎まさよしさんのファンで、昨年はライブにも行ってきました。まさやんは音楽的な才能も素晴らしいですが、演技力にも定評があります。初めての映画出演作「月とキャベツ」で主演していますが、これはとてもすてきな映画です。実際yahoo映画のユーザーレビューでもほとんどの人が褒めているほどです。その後TVドラマ「奇跡の人」の演技でかなりの人気を得たことはご存じの方も多いのではと思います。

この映画は「BUNGO―日本文学シネマ―」の一作です。他に太宰の「黄金風景」芥川の「魔術」森鴎外の「高瀬舟」谷崎の「富美子の足」梶井の「檸檬」が映画化されています。向井くんや成宮くんなど、今人気の俳優が主演しているのも見所です。それにしても「グッド・バイ」の主演になぜ…と、本人も思ったみたいですが(メイキングで言ってました)きっとまさやんと原作を知っている多くの人がそう思ったのでは。

皆さんご存じのように、伊坂さんの「バイバイ、ブラックバード」はこれ(原作)を元にしています。たくさんの愛人を持つ田島が、田舎から妻子を呼び寄せて心機一転しようとします。愛人達と穏便に別れるために、絶世の美女を妻に仕立て、一人一人に「グッド・バイ」と別れを告げに行くストーリーです。しかし太宰の死のために未完に終わり、たった一人と別れただけになりました。伊坂さんの作品では絶世の美女がなぜかマツコさんでしたが…^^;実はこの映画を見るまで原作を読んでいなくて、ネットに全文UPされていたのを読みました。太宰治は「斜陽」「人間失格」「走れメロス」と、太宰と言えばこれ!みたいな作品しか読んでいませんでした。だから、「グッド・バイ」の軽妙さとユーモアには驚きました。これが未完なのはほんとに惜しいです。このあとどんな風に他の女性と別れていくのか…。乱暴者の兄がいるという二人目の女性と怪力で男勝りなキヌ子が、相対するところが読みたかったです。

自分の家が大好きなまさやんは、あちこちに愛人を持つような生活からは全く遠そうに見えます^^;実際、女たらしな演技をしてる時より、キヌ子にしてやられる演技の方が似合ってました。ほとんどがそういう場面なのですが(笑)独特のユーモアある雰囲気を持ってるので、意外とこの役には合ってるような気がしました。高い料理を食べまくるキヌ子に文句を言うシーンや、最初の女性と別れる時にひそかに涙するシーン、キヌ子に手を出そうとして叩き出され、廊下からキヌ子に情けな~い声をかけるシーンでは爆笑してしまいました。(涙するシーンでなぜ爆笑?^^;)キヌ子に振り回されお金をむしり取られる田島には、どうしようもない男だと思いつつ、「バイバイ、ブラックバード」の時と同様に、何となく同情と親近感のようなものが湧くのは不思議です。キヌ子の役は水川あさみさんです。普段のおんぼろ服とオシャレした時のギャップがすごいです^^;声を荒げて田島に突っかかるキヌ子の様子を見ると、原作の「鴉声」のイメージがぴったり(失礼)田島を叩き出すシーンは迫力でした(笑)

たった30分の映画でしたが、とっても面白かったです^^原作と同じくもっと続きが見たい~!という気持ちになりました。このシリーズの他の作品も見てみたいです。また、これを機会に太宰治の作品にもう少し親しんでみたいと思いました。