謎解きはディナーのあとで  東川篤哉

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国立署の刑事である宝生麗子は、「宝生グループ」の令嬢であることを隠して勤務しています。難事件を執事の影山とともに解決するユーモアミステリです。
これで思い出すのは「亀有」の麗子(名前も同じ)やドラマの「富豪刑事」ですね。でも、富豪であることを事件解決に役立てたりはしていません。でも、その代わりに役立てているのが影山です。これが、まさに慇懃無礼という言葉がぴったりの人です。日頃はお嬢様として麗子を立てていますが、事件を相談されると、「お嬢様はアホでいらっしゃいますか?」などと執事にあるまじき発言の数々が飛び出します。執事で言うと、どこか主人を見下したところのあるジーヴスと共通してるかも知れません。でも麗子もやられっぱなしではなくて、けっこう意地悪したりしてるのでお互い様でしょうか^^;「プロ野球選手かプロの探偵になりたかった」そうですが、探偵としての素質は遺憾なく発揮されてます。次はプロ野球選手としての素質を見たいものです。バットで犯人と戦うシーンは出てきますが…。

東川さんと言えば脱力系のユーモア路線ですが、今回は御曹司や令嬢の勢揃いと、砂川刑事が出てない(笑)ってことでいつもよりはお笑いも格調高い(そうでもない?^^;)です。砂川刑事の代わりに、風祭モータースの御曹司である風祭刑事が、誰が考えても思いつくような推理をここぞとばかりに披露してくれます。今回のお笑いのメイン担当はこの人ですね。

思い浮かべるのも難しいような複雑な謎や、荒唐無稽なトリックは全然ないので、勘のいい人なら犯人を推理できるかも知れません。私も「綺麗な薔薇には~」で○○○を盗みに入るのはリスクが大きいと思ったんです。でも、その代わりに何を使ったのかはピンとこなかったので犯人にたどり着けませんでしたが…。 解決を読むと身の回りにありがちな物事を利用しているのに、そこに思い至らないのが残念です^^;特に「花嫁は密室~」で、人の呼称が違うというだけで犯人を指摘する推理は鮮やかでした。

中村佑介さんの表紙がパッと目を引いて、つい手に取りたくなります。中村さん、カスヤさん、片山さんの表紙はあちこちで目にしますね。気軽に読めて、ミステリとしてもなかなか楽しめる作品でした。キャラもユニークなのでシリーズ化してほしいです。