カササギたちの四季  道尾秀介

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最近重く暗い作品が続いていた道尾さんですが、ひさびさに「花と流れ星」のような軽妙さの中に感動がある作品が帰ってきました。「カササギシリーズ」の名前だけは前から知っていましたが、「泥棒カササギ」のイメージから泥棒関係の話かな~と思っていたら当たらずとも遠からじ、でした^^;でもカササギが泥棒するわけではなくて、人の名字でした。でも題字はカササギに引っかけて鳥の巣風です。

「リサイクルショップ・カササギ」を営む華沙々木と日暮(ひぐらし)が、顧客にまつわる謎を解くミステリーです。一応W探偵役なのですが、いかにもという感じに派手に推理を披露する華沙々木は、たいていの場合間違ってます^^;そして、陰でこっそりと事件を解決しているのが日暮です。なぜこっそりなのかというと、二人と行動をともにしている菜美の、華沙々木への憧れを台無しにしないように…という健気な思いからなのです(笑)
自信家で根は単純お人好しの華沙々木と、洞察力があり気遣いの人であることがかえって損な役回りの日暮のコンビがいい味出してます^^また、毎回日暮にただ同然の物を高く売りつける黄豊寺の住職との掛け合いも面白いです。

「―春― 鵲の橋」
ショップの倉庫にあった鳥のブロンズ像が焼けこげて見つかります。その事件と、ハンカチを探しに来た少年の関係は?
像が焼けこげていた理由が秀逸です。毎回間違った推理と正しい推理の二通りが用意されていて、道尾さんの引き出しってすごいなと素直に感心させられました。

「―夏― 蜩の川」
大口の依頼に喜び勇んで出かけた木工店で、加工用の神木が傷つけられるという事件が起こります。
華沙々木が毎回言う、解決のための3つのキーワードから、日暮はよく華沙々木の考えていることが分かるものですね~。それにしても推理を無理やり裏付けるためにそこまでするか、みたいな(笑)

「―秋― 南の絆」
奈美と初めて出会った時の出来事を回想する物語です。奈美の家で高価な家具が売りに出され、それを引き取りに行った華沙々木たちは、家の猫が盗まれるという事件に遭遇します。
途中でナーちゃんとマルちゃんを混同して、マルちゃんの方を段ボールに入れるとこを想像して「ん?」となってましたが、これストーリーに関係ありましたね^^;間違った推理の方は予想つきましたが、真相はハートフルな物語でした。

「―冬― 橘の寺」
黄豊寺の住職から蜜柑狩りに誘われた3人ですが、雪に降り込められ、寺に泊まることになります。そこで住職が大切にしていた貯金箱が割られるという事件が起こります。
タイトル通り、最後まで蜜柑にこだわった展開がいいですね。親子の関係を蜜柑の木になぞらえたところ、さすがです。ラストの奈美の言葉には、意外と人を見る目があるんだな、と驚きました。

各章のタイトルには、それぞれ登場人物の名前が入っていますが、ただそれだけではなく、その言葉が重要な意味を持っているところが素晴らしいと思いました。ミステリーとしての完成度も高いし、ユーモア、感動と3拍子揃った物語です。こういう読後感の良い作品がもっと読みたいです。「真備シリーズ」とともにお気に入りのシリーズになりました^^