なのはな  萩尾望都

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3.11の後発表された最新作品集です。
福島を舞台にした二編と、原子力の恐ろしさを擬人化した三編が収録されています。
 
「なのはな」
福島に住むナホは津波で祖母を失いました。
祖母の死を認めたくない祖父を始め、残された人々の不安や喪失感を描いています。
ナホの夢に現れるチェルノブイリの子ども、祖母の手回し式の種まき機、土壌をきれいにするいっぱいの菜の花。それらのモチーフに込められた作者の思いに胸がいっぱいになりました。涙なしには読めない一作です。
 
「プルート夫人」「ウラノス伯爵」「サロメ20XX」
プルートはプルトニウムウラノスはウラン、サロメはやはりプルトニウムを表しています。
擬人化された彼らは美しく魅力的で、人々に財や幸福感を与えます。危機感を抱く登場人物もいますが、その声は他の人には届きません。
半減期が2万4千年という、人間には想像もつかないほど先まで毒性を保ちつづけるこの物質を、思うがままに扱えると思い上がった人間の愚かさが伝わってきます。
 
「なのはな―幻想『銀河鉄道の夜』」
「なのはな」の続編です。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」と「ひかりの素足」が引用されています。
ナホは夢の中で兄の学と銀河鉄道に乗ります。そして祖母や、震災で失われたたくさんの命に出会います。
銀河鉄道での経験で癒されていくナホに温かい気持ちになります。
 
白に銀色の静かな表紙の下は、輝くような菜の花の黄色でいっぱいです。
被災した人々の心の中にも、菜の花のように温かい光が満ちることを願わずにはいられません。