贖罪の奏鳴曲  中山七里

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作曲家シリーズで人気の作家さんですが、いきなりこのリーガルサスペンスから入ってしまいました。硬質の文体に、イメージの違いを感じながら読みましたが、これは面白いです!

御子柴礼司は、優秀ですが金儲け主義の弁護士として有名でした。
物語は、御子柴が死体を川に遺棄する場面から始まります。
刑事は、被害者である記者が追っていた事件に関わる重要人物として御子柴に注目しますが、彼には鉄壁のアリバイがありました。
そして、御子柴が弁護を引き受けている事件の成り行きが、始めの事件と並行して語られます。

この物語で重要なのは、御子柴の過去です。
彼が過去に起こした重大事件、そしてそれに続く出来事が、現在の彼を作り上げています。御子柴はいったいどんな人間なのか、多くの読者がそのことに引きつけられるのではないでしょうか。それほど御子柴というキャラクターは異質です。御子柴を理解することがこの物語を理解することと言っても過言ではないと思います。
タイトルにつけられている贖罪とはどういう意味なのか、最後にこの言葉が深い意味を持って胸に迫ります。

法廷での御子柴の弁舌の巧みさ、検察側とのやり取りは圧巻です。相手側の検事もやり手で、御子柴に負けじと渡り合い、手に汗握ります。法廷物としても読み応えがあると思います。

しかし、本当の見所はこの後からです。
犯人については予想通りだったのですが、その後さらにこういう展開が待ち受けているとは…。やられました。
最後の最後まで、気を緩めずに読んだ方がいいですね。

作者は女性だと思っていましたが、男性なのですね。
この作品にもピアノが印象的に描かれています。音楽に造詣が深い方なのかと思いましたが、息子さんが音大でピアノを専攻しておられるそうです。
ぜひ、作曲家シリーズの方も読んでみたいと思っています。