ノエル  道尾秀介

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登場人物が作った物語が、各編で重要な役割を果たす、連作短編集です。
この本はやはりクリスマスシーズンに読みたいと思って寝かせていました
「光の箱」は「Story Seller」で既読でしたが、内容はすっかり忘れていたので新鮮な気持ちで読めました^^

「光の箱」
いじめにあっていた圭介は、同じクラスの弥生と心を通わせ、一緒に絵本を作ります。
しかし、ある出来事をきっかけに別れ別れに…。
「赤鼻のトナカイ」や「ママがサンタにキスをした」にちなんだ絵本の物語が、暗いトーンで続く現実の物語をだんだんと明るく照らしていくようです。
そして、道尾さんらしいサプライズが待っています^^

「暗がりの子供」
足が不自由で劣等感を持つ莉子は、妹の誕生をひかえて精神的に不安定になります。
やがて読んだ物語の主人公が一人歩きして、莉子に影響を与えるように。
これもよくできた話ですね~。
莉子が「空飛ぶ宝物」の物語を読みながらストーリーが進むので、気になる所で本が置かれてしまうのと、はらはらさせる現実の物語とが並行して、それぞれがどうなるのか引き込まれます。

「物語の夕暮れ」
妻に先立たれた元教師の与沢は、生きる希望を失い、身辺整理を始めます。
妻との子供時代での思い出の物語、その中で語られるかぶと虫の物語。いくつもの物語が絡み合う中で、「光の箱」「暗がりの子供」のストーリーもつながり、収束していきます。
祭り囃子を電話越しに聴きたいという思い、逃がしたインコ、一つ一つのエピソードがこんな風につながっていくのだな…と感心させられました。

最近の道尾さんの作品の重要なテーマ&モチーフである光。
光によってつなぎ合わされた人と人の間に、信頼や相手を思う気持ちが生まれる、そんな作品が多いように思います。
「ノエル」も読み終わった後、温かい思いでいっぱいになる素敵な作品でした