残り全部バケーション  伊坂幸太郎

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下請けで当たり屋や恐喝など裏稼業に手を染める溝口と、その相棒である岡田をめぐる連作短編集です。
5年間に渡って少しずつ発表してきた短編を、書き下ろしでまとめたという構成になってますが、これは最初からこういう構想があったんじゃないかと思わせる、見事な展開です。

「残り全部バケーション」
離婚を機にばらばらになってしまう予定の家族と、なぜかその家族と最後のドライブをすることになる岡田の一日を描いています。
淡々としてつかみどころがない岡田と、直情型で分かりやすい溝口の対比がおもしろいです。
ラストの「レバーをドライブに…」という台詞、心に残ります。家族にとっても、前向きになれる言葉だったんじゃないでしょうか。

タキオン作戦」
父親から虐待されている少年を助けるために岡田が考えた作戦とは?
突拍子もない作戦を成功させるための、手の込んだ舞台作りがユニークです。
タイトルから福島さんの「リュイテン太陽」をなぜか思い出した私(笑)タイトルからの想像しづらさが共通点なのかも^^;
でも、当たらずとも遠からじ、みたいな作戦でした(笑)

「検問」
車のトランクに入っていた大金を、なぜ検問の警察官は見逃したのでしょうか。
溝口と、岡田の後任である太田を中心にした、ちょっとスラップスティックな味わいのある作品です。
見逃された理由についてあれこれ推論を巡らせる2人の会話のバカバカしさと、え、もしかして本当?と思わせるさじ加減がいいですね。
ラストの一文、「歩いていく」でなく、「歩いていける」なのがいいなあと思いました。

「小さな兵隊」
「問題児」と周囲から思われていた岡田の子供時代の物語です。
「問題児」がいれば「答え児」もいるはずっていう発想、すごいですね~。
「突っ張った子供」には笑いました(笑)
岡田の問題行動の理由、校舎をのぞいている男など、ミステリ的な楽しみ方もできる作品です。
アドバルーンの男は、あの人だなってすぐ分かりますね(笑)

「飛べても8分」
とんでもはっぷんって、英語が元になってるって初めて知りました。「歩いて10分」の方は知らなかったです^^;
溝口の行動には驚きました。ずっと自分のしたことを後悔していたんですね…。
焼肉店のメールにもこういう効果が!さすがです。
毒島は物分かりのいいところを見せているけれど、これからどうなるのか…ラストは「バイバイ、ブラックバード」的な余韻を残す終わり方でした。

読み終わった後に1話を読み直すと、ちゃんと5話の伏線があることに気づきました。
タイトルの「残り全部バケーション」も、もう一度5話で押さえられています。
物語同士のリンク、気持ちの良い展開、印象的な言葉と伊坂さんらしさ満載で、素直に楽しいと思える作品でした^^



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5つの短編が見事につながった面白い作品でしたね^^

僕も答え児は大好きです。面白い発想ですよね~

飛んでも8分は僕の地方では歩いて15分でした。
地域差?年齢差かな? 削除

2012/12/31(月) 午前 2:16 [ アル・アル ] 返信する
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最後はすべての短編をうまく繋げてましたね。相変わらずセリフも良かったし、伏線回収も見事で気持ちのいい作品でした。ラストの締め方がまた良くてあれ以外の結末はむしろ陳腐になりそうです。 削除

2012/12/31(月) 午後 3:28 [ テラ ] 返信する
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>アル・アルさん

伊坂さんの発想にはびっくりですよね^^

歩いて15分って、語呂が…(笑)
でも、地域によって違うって面白いですね^^ 削除

2013/1/1(火) 午前 0:52 ねこりん 返信する
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>テラさん

巧いですよね~^^
そんなインターバルがあった作品とは思えないです。
ラストも良かったですね。
焼肉屋のメールの前振りが効いてましたね☆ 削除

2013/1/1(火) 午前 0:57 ねこりん 返信する
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久々に爽快感溢れる伊坂作品を読んだ気がします。やはりこういうのが面白いです。言葉のセンスがとてもいいですよね。焼肉のメルマガのくだりがとても好きで(笑)。ちなみに、わたくし「飛んでも8分」初耳でした^^; 削除

2016/1/16(土) 午前 11:38 ゆきあや 返信する
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>ゆきあやさん

伊坂さんって気持ちよく読ませるツボを押さえてますよね。さすがです。
焼き肉屋のメールのとこ、良かったですよね^^
「飛んでも8分」知ってても自分で使ってみたことはない言葉です(笑)地域性もあるようですね。 削除

2016/1/17(日) 午後 3:01 ねこりん 返信する