脳男  首藤瓜於

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映像化でお蔵出し第2弾です。
第46回江戸川乱歩賞受賞作で、この度生田斗真くん主演で映画化されました。

連続爆破事件の犯人を追う茶屋刑事は、犯人を追い詰めますが、あと一歩で取り逃がしてしまいます。現場にいた謎の男鈴木一郎を犯人の共犯として逮捕しますが、彼は感情のない人間でした。

本を読む前は、感情のない殺人鬼が次々に人を殺す話かと思いこんでたのですが、だいぶ違う話でした。

物語の前半は、鈴木(偽名です)を精神鑑定することになった鷲谷真梨子が、彼がどんな人間なのか、調査を進める様子が描かれています。
その中で、鈴木が常人にない高い能力を備える一方、自我が形成できず、感情もなく、自分の体も思うように動かせなかった過去があることが分かります。
ではなぜ今は普通に生活できるのか?彼が犯罪を犯す理由は…ということを焦点に物語は進みます。

この前半部分、真梨子の場面がほとんどなので、鈴木はあまり登場せず謎の多い存在のままです。
彼という人間が形成されていった背景は何となく分かってくるものの、この後どういう風に展開するのか予想がつきませんでした。

後半は取り逃がした爆弾魔が新たな事件を起こし、茶屋、真梨子、そして協力を願い出た鈴木の3人で犯人を追います。ここから物語は一気に加速します。
犯人がどんな手口で爆弾を仕掛けているのか、前半で書かれていた伏線が生きていて、なるほどと思いました。

子供の救出劇でのアクションはミッション・インポッシブルのようで、とても緊迫感のあるシーンです。ここは見所の1つだと思うので映画でぜひ観たいのですが、あるんでしょうか?

いよいよ犯人逮捕という大詰めの場面では、思わぬ展開にびっくりさせられます。
そして、あ~そうだったのか!と唖然です。確かに違和感ある行動だったのですが…読めませんでした。
これらのシーンで、鈴木の特殊能力が生かされているのも巧いです。

ラストは鈴木の悲哀に胸を衝かれます。
ヘレン・ケラーが初めて物と名前を一致させることができた「水」その衝撃的な瞬間のことが頭に浮かびました。
彼にとって同じ出会いが……だったとは。
感情を全く表さなかった鈴木が初めて苦悩を表情に出すシーンが心に残りました。
確かに許されない犯罪者ではあるのですが…感情移入してしまいました。

映画の試写を観た人の評価も、脚本と演技が素晴らしいということでなかなか高いようです。
素直に感情を出す役が多かった斗真くんが、正反対の役をするというのも興味が湧きます。
ぜひ観てみたい映画です。