サイモン・アークの事件簿 I  エドワード・D・ホック

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世界中で起こる怪奇事件を解決するサイモン・アークを主人公にしたシリーズ第1巻です。

何と言ってもキャラクターがユニークです。サイモンは自称2千才。見た目は70代です。でも、1編目と最後の作品まで40年以上の月日があるのに、サイモンの見た目は全然変わっていません。初めは謎めいた雰囲気が少し不気味な存在ですが、だんだんと親しみを感じるようになるのが不思議です。

オカルトの研究者として各国で名を知られ、怪奇事件が起こると探偵役としてお呼びがかかります。ワトソン役の新聞記者「私」(なぜか名前は出てきません)とともに事件を解決します。
事件の導入はオカルト的な内容ですが、実は巧妙なトリックがあり、人間が起こした犯罪であることが明らかになるというのが共通です。

全十編の中から、特に印象に残った作品を紹介します。

「死者の村」
73人もの人間が崖から飛び降りた、謎の大量自殺事件が起きた村。そこで「私」とサイモンは初めて出会います。
作者のデビュー短編だそうです。どうやったらそんなたくさんの人間を死に追いやれるのか、最初から引きつけられる内容です。

「魔術師の日」
「私」はエジプトの砂漠に墜落した飛行機をサイモンとともに探す依頼をされます。一方でカイロで有名なマジシャンであるウィザードが、サイモンに挑戦することに。しかし、殺人事件が起き…。
殺人事件のトリック、ウィザードの手品のトリック、砂漠での人間消失など、様々な謎がてんこ盛りで、しかも思わぬ結末へと結びつく読み応えのある作品です。

「狼男を撃った男」
州知事選を控えた候補の男が、庭にいた狼をライフルで撃ったところ、それは若い男でした。男は狼男だったのでしょうか?
狼男についてのサイモンの蘊蓄と、珍しい軽口が面白いです。サイモンが途中で挙げたように、3パターンの推理が思い浮かびますが、なるほどそう来ましたか、という感じです。
すっきりと分かりやすい話ですが、読み終わると疑問も…。

「妖精コリヤダ」
ロシア研究者の家族が住む6軒の住宅に、ロシア民話の妖精コリヤダが訪ねてきて子供達にプレゼントを配ります。しかし、ある日コリヤダが訪ねた家の教授が凍死したように冷たくなっているのが発見されます。コリヤダが殺したのでしょうか。
なるほど、推理するためのヒントはけっこう分かりやすいのに、気づいてませんでした^^;犯人の動機を考えると少し切ない気持ちになります。

「奇跡の教祖」
新興宗教の教祖に関心をもったサイモンと「私」は教祖に会いますが、仲介した教団メンバーの女性が行方不明になります。
今までの話は、出だしは不気味だけどだんだんリアルな話になって落ち着くという展開でしたが、この話は最初からうさんくさいです。でも、思わぬ展開に驚かされます。

どれも手がかりがきちんと書かれているフェアな話なので、注意深い人なら犯人を推理できるのではないでしょうか。

今第4弾まで出ているのですが、また初期の話~近年の話という構成なのでしょうか。
短編集の中で「私」がどんどん年を取ってるのでびっくりしました。サイモンは全然変わってないんですが(笑)
サム・ホーソーンのシリーズとはまた違った雰囲気で面白かったです。