推理作家ポー 最期の5日間  監督 ジェイムズ・マクティーグ

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少し前「黒猫の接吻あるいは最終講義」を読んで、ポー再読熱が高まっているところに、この映画を発見して観てみました。
映画が「ポー」なので、この記事では「ポオ」ではなく「ポー」の表記でいきたいと思います。

タイトルのように、ポーが亡くなる前の5日間を描いた作品です。
実際ポーの死は謎が多く解明されないままです。ポーは泥酔して見つかり、4日間危篤状態が続き、5日目に亡くなりました。映画ではその4日間を事件に巻き込まれた日々とし、最後に亡くなったという作りになっています。
亡くなる前に何度も口走ったという「レイノルズ」という名前が、映画の中で生かされています。
見つかったのが選挙の投票日だったため、無理にお酒を飲ませて意識が朦朧となったところで投票させる悪質な選挙違反の犠牲になったというのが一般的な説らしいです。

素晴らしい才能で、世間的にも注目を浴びるポー(ジョン・キューザック)は、愛する妻ヴァージニアを亡くし、しかも作品に見合った報酬をもらえず、酒浸りの日々でした。
しかし、エミリーと恋仲になって生活にも活気が出ます。
その一方、ポーの作品を模倣した殺人事件が起こり、エミリーがさらわれてしまいます。

物語全体を不吉に横切る「大鴉」(映画の原題The Raven)、「モルグ街の殺人」に始まり、「落とし穴と振り子」「赤死病の仮面」「マリー・ロジェの謎」などなど、ポーを読んだ人には観ただけで分かるような殺害方法やモチーフが次々に出てきます。
しかもグロイ…かなりスプラッターです。振り子も原作と違ってすごい勢いで落ちてきます。振り子の装置は手の込んだ物で、犯人の正体からしてあんな物作れるの?と思いました^^;
あと、最初の殺人の手の大きさについての話は…どっか行っちゃいましたね^^;

画面の感じや音楽が、「シャーロック・ホームズ」(ロバート・ダウニーjr版)に似ていました。ポーの作品からはゴシック的な香りが漂ってきますが、この映画は陰鬱な感じはするものの、原作の持つ美意識や格調高さは望まない方がいいかも^^;
でも、原作に親しんだ人にとっては、次に何の作品が出てくるのかというわくわく感があるし、ストーリーもテンポよく進むので退屈するということはありません。

犯人は、メインの登場人物が少ないために予想がついてしまいます。ポーの作品を偏愛する犯人が、ポーを操って作品を書かせ、それを永遠のものとするためにポーを殺そうとするという動機は分かりました。でも、なぜポーが最後まで犯人の意のままになってしまったのか…。エミリーの行方を教えてもらえると思ったのでしょうか?

キューザックは上手い俳優さんなので、ポーってこんな感じなのかもと思わせる説得力がありました。
あとフィールズ刑事役のルーク・エヴァンズ。目を引くかっこ良さです。最後の最後まで見せ場があるので要注目です。

ポーの作品を愛する人には少々納得が行かない内容かも知れませんが、ポーをある程度読んだだけという私にはわりと楽しめる映画でした。