厭な物語  A・クリスティー他

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タイトル通り、厭な結末を迎える物語のアンソロジーです。
昔はホラーをよく読んでいたので厭な話には慣れていました。キングなんて厭な話の方が多かったし…。
でも最近はそういう話を読むのがしんどくて遠ざかっていました。
久々に読んだけれど、厭な話にもいろいろなパターンがあって、興味深く読めました。

「崖っぷち」 アガサ・クリスティー
クリスティーもこんな話を書いているんですね。女性の心の闇を描いています。登場するもう1人の女性がヴィヴィアン・リーなのは偶然でしょうか^^;

「すっぽん」  パトリシア・ハイスミス
厭な話と言えばこの作家さん、思い浮かびますね~。本作は読んだことないと思っていましたが、「11の物語」は読んでたので、同じく所収の「かたつむり観察者」の方が印象的だったんですね。子供心にこれはショックだろうという内容です。

「フェリシテ」  モーリス・ルヴェル
男女の別れによる喪失感をテーマにした、文学的な香りのする作品です。

「ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ」  ジョー・R・ランズデール
無軌道な少年達が、その上を行く無軌道な大人に出会う、隅から隅まで厭なイメージで満載の作品です。
こんなに人種差別を前面に出しても、問題にならないんでしょうか?

「くじ」  シャーリィ・ジャクスン
異色作家短篇集」にも収められています。ある村で行われる謎のくじ引きとは?
結末の予想はつくのですが、なぜ?というのが気になって引っ張られます。
恩田陸さんの「いのちのパレード」にある「当籤者」はこれが元になっているんでしょうか。

「シーズンの始まり」  ウラジーミル・ソローキン
解説にもありましたが、ある1点を除けば、単なる狩猟シーズンを描いた物語です。

「判決 ある物語」  フランツ・カフカ
ロシアで苦労している友人への対応を父親に相談に行った息子は…。
父親の一方的にエスカレートする罵詈雑言に唖然です。

「赤」  リチャード・クリスチャン・マシスン
こちらは息子さんの方です。短い作品ですが、何とも胸がつまる悲惨な物語です。

「言えないわけ」  ローレンス・ブロック
復讐をテーマにしたアンソロジーのために書かれたそうです。妹を殺された男の執念を描いていますが、犯人が最悪です。この後スカッとする展開が待っているはずなのですが、そこまで書かず、すごく厭な所で終わっているのが気分が悪いです。

「善人はそういない」 フラナリー・オコナー
道を間違えたことから、登場人物の予想通りの厭な展開にまっしぐらです。
祖母は一生懸命に犯人の信仰心に訴えようとしますが、逆効果なのが痛いです。

ここであと一編を残してなぜか解説に。それは、ラストのブラウンの作品に秘密があるのです。

「うしろをみるな」  フレドリック・ブラウン
真面目な印刷工だった男が、ある男に魅了されてどんどん悪の道に踏み込んでいく物語です。最後の方はほとんど取り憑かれている状態になってしまっているのが怖いです。
ラストを読むと、この作品が解説のあとにある意味が分かります。

自分の「厭度」で言えば、1位「ナイト・オブ~」 2位「言えないわけ」 3位「赤」です。
読んだ方の順位も聞いてみたいです。
裏表紙の見返しの所に「文春文庫 厭な物語たち」とあって、キングの「1922」やトゥローの「推定無罪」などが挙げられているのがちょっと面白いです。
今ではイヤミスっていうジャンルまでできていて、そういう人間の暗部を描いた作品は怖いながらも惹かれるものがあるんですね。でも、気持ちに余裕がある時しか読めないですが^^;