桐島、部活やめるってよ  監督 吉田大八

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バレー部のキャプテンである桐島が、友人の誰にも知らせることなく部活をやめてしまいます。
それを人づてに知った、桐島をとりまく学生達の動揺や、これをきっかけに変わろうとし始める姿を描く作品です。

この物語には、最後まで桐島は出てきません。桐島の周辺から桐島のことが語られるだけです。

男子の中心グループ、男子達の彼女を含むメンバーで構成された女子の中心グループ、そして映画部グループ。3つのグループを対比しながらストーリーは進みます。
ちょっとヒリヒリするような、もどかしいような、憧れや、妬みや、優越感や、焦燥感を秘めたエピソードが積み重ねられ、学生時代を思い出さずにはいられません。

桐島の部活が終わるまで、バスケをして遊びながら待つ、宏樹(東出昌大くん)、竜汰、友弘。
宏樹は野球部に所属していますが、ずっと部を休んでいます。竜汰と友弘は帰宅部です。
3人とも、桐島に精神的に依存しているため、突然の退部に動揺が隠せません。

でも、ただ何となく日々を過ごしていた宏樹が、桐島から離れることでやっと自分を見つめ直す機会を得るのです。

宏樹に影響を与える人物の1人が、神木くん演じる涼也です。
桐島や宏樹のグループが、クラスの中心グループなら、涼也は地味で目立たない生徒です。いわゆる映画オタクで、映画部でゾンビ映画を制作しています。
宏樹のグループとは全く関わりのない所で生活しているので、どんな風に関わってくるのか気になりました。
宏樹を好きな吹奏部の女子と、行く先々で場所の取り合いになるのが面白いです^^

もう1人は野球部のキャプテンです。宏樹に試合に出るようにたびたび声をかけますが、宏樹はそれをわずらわしく思っています。
このキャプテンが、いかにも野球部の3年生という感じでいい味だしています。

2人に共通するのは、自分の好きなことにひたすら打ち込んでいるということです。

キャプテンの野球への思いを知って、試合に出てみようと思い始めるのが変化への第1歩でした。

そして、唯一、宏樹と涼也が話す屋上のシーン。
直前のゾンビの大乱闘には唖然としましたが、実際は大したこともなく終わったのでしょうね^^;

8mmカメラから落ちた部品を涼也に渡すシーンは一番印象的です。
今までなら全く興味も持たなかっただろう涼也に対して宏樹が話しかけます。
涼也から「かっこいいよ」と言われて涙を浮かべる宏樹。

女子に憧れられ、仲間や彼女と過ごしていても、夢中になるもののない空しさ…。
自分は涼也やキャプテンに比べ、人間として全然かっこ良くないと、その時気づいたのだと思います。

東出くんのことをこの映画で初めて知りましたが、少し不器用な感じの雰囲気が好ましく、印象に残る役者さんでした。

学生時代にしかない空気感を、さりげない台詞と日常のエピソードで表すことに成功した、なかなか良い映画でした。

原作も近日中に読みたいと思います^^