私と踊って  恩田陸

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ノンシリーズの短編集です。
恩田さんは設定が独創的な作品が多く、それを効果的に生かすのに短編の方が合っているのではないかと思います。長編は広がりすぎてしまって、ラストは「あれ?」ということも^^;
全19編のなかから、特に心に残った作品を紹介します。


「心変わり」
会社の席を中座したままいなくなった同僚。その行方を、同僚の席の様子から推理します。
短編が合っているといいましたが、これはすごく続きが読みたい作品です。これを導入にして長編…せめて中編にしてほしい気がします。

「少女界曼荼羅
景色や建物が移動する世界に住む人々、その世界に現れる「曼荼羅」とは?
あとがきによると、ブラッドベリの「びっくり箱」(既読)を元にしているそうですが、私が連想したのは映画の「CUBE」でした。

「理由」
耳の中に猫が落っこちた!?
あり得ない設定が楽しく、スラップスティックでオチのある、ほんとに落語のような話です。

「二人でお茶を」
亡くなった天才ピアニストに憑依されるピアニストの物語です。
恩田さんの思いが強く感じられる作品だったので、きっと実在したピアニストなのではと思いましたが、やはりそうでした。

「聖なる氾濫」「海の泡より生まれて」「茜さす」
写真を撮った人の思念を写真から感じ取ることができる能力を持った主人公の連作です。
大英博物館についての本に連載されたそうで、その土地の情緒が感じられる作品になっています。

「私と踊って」
これも実在の舞踏家を元にした作品です。
なぜ踊るのか?その答えはこの物語の中にあります。二人の女性のダンスを通した交流が心に残りました。

「東京の日記」
ブローティガンの孫が書いた日記という設定に驚きました。巻末からスタートの横書きという体裁が「らしい」です。
東京の風物詩を描きつつ、戒厳令が敷かれるという非日常が日常になってしまっている日々を語るというのが新鮮に感じました。

「交信」
ショートショートで、ちょっと変わった形式のSFなのですが、なんと書いてある場所が表紙です。
図書館で借りる人はたぶん…読めません><


バラエティに富んだ内容で、掲載の仕方にも工夫があって面白かったです。人によって作品の好みも分かれそうな気がします。



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恩田さんの短篇集を読むといつも、万華鏡のようだなぁと感じます。一作ごとにくるくると姿を変えていろんな面を見せてくれるので、飽きることがありません。次はどんな切り口で来るのか、ワクワクするんですよね。
続きが気になる作品がたくさんありましたね。どこかで続編書いてくれないかなぁ。 削除

2013/10/24(木) 午前 0:51 べる 返信する
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>べるさん
発想がすごく豊かなんですよね。人にないアイディアをたくさんお持ちの方だなあと思います。
短編がいつか長編に…というのは他の作家さんではけっこうあるので、恩田さんももしかしたらあるかも? 削除

2013/10/26(土) 午後 6:01 ねこりん 返信する