壬生義士伝   監督 滝田洋二郎

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先日、堺雅人さんの出演された時代劇はだいたい観ていると記事に書きましたが、この映画は観ていなかったので気になってました。

主役は新撰組の隊士、吉村貫一郎中井貴一)です。吉村は盛岡藩の出で、家族が食べるのもやっとという貧しい暮らしぶりでした。しかし、剣術の腕を買われ、入隊します。その後も、命とお金に執着する吉村の様子に、斎藤一佐藤浩市)は興味と嫌悪を抱きます。

年老いた斎藤が、孫を連れてある病院を訪れたところ、額に入った吉村の写真を発見し、当時のことを回想するという構成になっています。院長(村田雄浩)はなぜ吉村の写真を持っているのか?ということが、物語を通しての謎となっています。

堺さんは沖田総司の役なので、回想の一番最初から出ていて、髪型も1人だけ月代で目立ってます。稀代の剣士と呼ばれた人物のため、立ち回りシーンも多く、かっこいい姿が観られます^^
剣の稽古には厳しかったそうで、冒頭で吉村と永倉に真剣での立ち会いを勧めるシーンも、そういう点を生かしてのものなのでしょう。
他の隊士とは違う吉村のことを面白がっているようで、あの笑顔でにこにこしていることが多かったですが、ひとたび剣を抜くと何だか鬼気迫る感じでぞくっとしました。

それは吉村も同じで、訛りのある田舎侍で遠慮がちな口調が、剣を抜くとがらりと変わって非情な雰囲気を漂わせるのがさすが中井さんでした。

総司は肺結核にかかって戦線を離脱するため、半分あたりで喀血して、そこで堺さんの出演シーンは終わりでした。でもそれはかなり目立つシーンでした。
堺さんがブレイクした大河ドラマの「新撰組!」の前の年の作品なので、もうすでに注目される俳優さんだったということが分かります。

吉村は次第に隊士たちの信頼を得て、斎藤も吉村を見る目が変わっていきます。
鳥羽伏見の戦いでは、吉村を必死で助けようとする斎藤の姿が印象的でした。

自分の命や家族を顧みず、活動に専念したように描かれる新撰組ですが、一人一人を見れば、悩みや葛藤があったことでしょう。そういう人間らしい思いにスポットを当てているのがこの映画の特徴だと思います。
実際の吉村は新撰組の中ではほとんど無名に近い隊士で、大きな活躍もしていないのですが、そういう隊士だからこそ、取り上げる価値があるのかも知れません。
吉村の最期は、たった一人でかなり長い、つぶやくような台詞のシーンです。自分の故郷、そして家族を最後まで思い、持っていたお金を血だらけの手で分けるところは泣けます><

俳優さん達の熱演が心に残る、良い映画でした。