文・堺雅人  堺雅人

イメージ 1

今や時の人になった堺さん。
私が初めて堺さんに注目したのは大河ドラマ新選組!」の山南敬助役でした。
このエッセイはちょうどその頃から書かれたものです。先日エッセイのpart2が出て、1も感想を書いていなかったということもあって読み直してみました。

バラエティに出演されている堺さんを観ると思うのが、「話をしてみたい!」ということです。
「難しいことでも分かりやすく話せる」というのが頭がいい人だと私は思っていて、堺さんは本当に頭がいい人なんだと思うのです。気取ったところがなくて、思ったことを素直に表現している感じなんだけど、それがスッとこちらにも伝わります。その上何だかほのぼのさせたりクスッとさせたりするウィットがあるんですよね。

文章も人柄や話し方そのままに、柔らかくこちらに話しかけてくるような文体です。
「かんがえる」「はじまる」「おもう」など、普通なら漢字になる言葉がひらがな書きで気になっていたのですが、編集さんとの対談で、「和語をひらがなにするというこだわり」について話されていて、それがこの独特の柔らかさにつながっているのかなと思いました。

「まえがきにかえて」のエッセイの中で、高校時代、寂れた演劇部の部室の中で、部員が来るのを一人でずっと待っていた様子を、
「まるで村人たちにわすれられた、ものさびた神社にでもいるような気分だった。 念入りに結界を張り巡らせてはみたものの、それが全体としてあまり役に立ってはいないような、山奥のひっそりとふるびた聖域―」
この一文を読んだだけでも、堺さんの文章力が分かります。

数年ごとに章分けしてあり、扉にその当時に出演していたドラマや映画、舞台が挙げてあるので、エッセイと照らし合わせることができます。作品について思い出しつつ、裏話がいろいろと聞けるのが楽しいです。

ハチミツとクローバー」で、加瀬さんや伊勢谷さんと年が近かったにも関わらず、教師と生徒役の違いもあって、5人の生徒の和気あいあいとした輪に入れず疎外感を感じていたそうで、そんなことがあったんだなあ…と思いました。
一方「ヒミツの花園」では、兄弟役4人でボードゲームや寸劇に夢中になっていたことが書かれていて、輪に入れて良かったですね。

篤姫」の徳川家定役では、「品とはなにか」、ということについてだいぶ考えたことについて書かれています。
堺さんはたたずまいに品があり、持っている雰囲気が美しいと思うのですが、ご本人は「『品のよさ』は僕の手にあまる」と考えていらっしゃるようです。
ですが、3回に渡る「品」についてのエッセイで、最後に、
「たとえば『品』は、僕に花瓶にいけられた一輪の花をおもわせる。」
と一応の解釈を試みておられました。

私も、子供の頃家族が、「この役者は品がある」とよく品について話していたのを思い出しました。でも、それがどんなものなのかよく分からず、かすかに反発を覚えていました。でも、今では自分が「品」という言葉を使っているので、何となくこういうものだろうと自分で判断しているわけです。
それで、堺さんの「品」についての文章にはとても共感しました。

あと、驚いたのは、「新選組!」の翌年、舞台の地方公演のついでに、私の地元(かなり田舎)に訪れておられたことです。よく知る場所に座る堺さんの写真を見て、不思議な感じがしました。
「本当にいいまちでした。」という一言が嬉しかったです。今度はぜひご夫婦でいらしてほしいものです。

引き続き、part2に進みます。