フランクを始末するには  アントニー・マン

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ユニークな発想の短編集です。わりとブラックな結末の話が多いのですが、もともとのタイトル作(「マイロとおれ」)のかわいらしさと、全編に流れるそこはかとないユーモア、そしてイラストのおかげで暗い雰囲気にならずにすんでいます。

「マイロとおれ」
赤ちゃんと刑事がタッグを組んで殺人事件を解決します。赤ちゃんの「センスオブワンダー」に期待しての「天真爛漫計画」っていうのが面白いです。
比喩として出てくる動物の名前に反応するマイロがかわいすぎます^^二人の会話も微笑ましくて、すっかりこのコンビのファンになりました。

「緑」
芝生のようにきちんと整備された緑しか認めない住人達の中で、たった1人、小さなレボリューションを起こす男の物語です。
主人公の気持ち、よく分かります。雑草にもかわいらしい花が咲いてるのを見て、抜かずに置いておくこと、よくあるので…。
ラストがいいですね^^

エディプス・コンプレックスの変種」
チェスが強くなりたい男は、父親を憎悪するように博士から勧められます。
父親にずっと同情しながら読んでいたのですが、思わぬラストに唖然です。

「豚」
豪邸に住む夫婦から、家に招待された夫婦は、そこで大切にされている豚と、やつれた若者を目にします。
もう、「ええっ?」っていう展開で、確かに豪邸の夫婦と付き合うのは二度とごめんでしょうね。

「買いもの」
買い物のためのメモだけで構成された変わった作品です。
書かれている品物で、書いた人の行動や考えが分かります。読者の想像力にゆだねている作者の意図は、他の作品でも感じられます。

エスター・ゴードン・フラムリンガム」
タイトルは亡くなった人気作家の名前です。ミステリ作家である男は、エスターの代作の権利を他の作家と競うことに。
せっかくユニークな設定の探偵を思いついたと思ったら、ことごとく他の作家の探偵の設定とかぶっているというのに笑ってしまいました(笑)代理人の知識もハンパないですね(笑)

「万事順調(いまのところは)」
男は復讐するためにごろつきに近づいていくのですが…。
最初読んだ時はよく意味が分かりませんでした^^;
1回分20ドルで100ドル渡したということは…ん~、ただ5回に分けて使うだけの気もしますが。

「フランクを始末するには」
大スターの追悼記事や番組で儲けたい人々が、殺し屋を雇ってフランクを始末しようとします。
スラップスティックな味わいが楽しいです。ラスト、マスコミ側の切り替えの早いこと!実際そういう世界なのかもと思わされます。

「契約」
犯罪の被害者遺族が、その体験談を売ることを求められますが…
売ることの方が普通で、断る方が変人扱いされるというのが何ともやり切れません。
「フランク~」もそうでしたが、マスコミに対する作者の批判がはっきりと表れた作品です。

「ビリーとカッターとキャデラック」
お気に入りの懐中時計を取られてしまったカッターは、相手のキャデラックを賭けて、減量に挑むことに。
イヤな予感的中…それだけの強い意志があるなら、ちゃんと減量しなさいって。

「プレストンの戦法」
チェスの必勝法を見つけた男の行く末は。
まあそうですよね…面白くないですよね、いつも勝ったんじゃ。
でも、こういう結末だとは思いませんでした。もうひとひねりありましたね。

「凶弾に倒れて」
父親を射殺された男が、今やマスコミの寵児となっている犯人への復讐心を募らせます。
特別な所は特にないかも。もう少し何か展開があってもいいんじゃないかと思いました。


やっぱり一番のお気に入りは「マイロとおれ」インパクトでは「豚」爽やかさでは「緑」
テンポの良さでは「フランク~」です。「契約」は考えさせられる作品でした。
作者は映画監督もされているそうなのですが、作品の雰囲気としては劇作家的ですね。
ラストに驚きがある作品が多くて楽しめました。