四畳半神話大系  森見登美彦

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京都旅行に持参したこの本、やっと読み終わりました。

「あの時こうしていれば…」という後悔、誰でも1度はありますよね。主人公が迷い込んだのはそんな願いを現実にしてしまう並行世界です。
裏表紙に書いてあったあらすじ、全然読んでなかったので、始めはこのストーリーの仕掛けに気づかず、何で同じ文章が何度も出てくるのかな?と思ってました。

主人公の「私」は森見作品ではおなじみの、大学生活を無為に過ごす「腐れ大学生」です。2年間を無駄にして、そもそも一回生の時に入ったこのサークルがいけなかった…と思いながらも、妖怪めいた悪友の小津、師匠樋口とさらに深みにはまる3回生の日々が続きます。
樋口や羽貫さんは「夜は短し…」とのリンクキャラですね。

章ごとの並行世界で違うサークルに入りますが、結局どこでも小津に出逢い、サークルで大騒動に巻き込まれ、ほとんど同じ結末へ…。
メインのエピソードはそれぞれ違っていますが、謎の占い師の「コロッセオ」という言葉、蛾の大発生、橋から落ちる小津などの共通の出来事があって、展開はまた微妙に違っていたりして楽しめます。
小津との腐れ縁エピソードがほとんどの中、明石さんと、ぬいぐるみのもちぐまを巡るエピソードが愛らしいです。

そして、最終話の「八十日間四畳半一周」は、もちろんヴェルヌから。
部屋を出ても、似て非なる自分の四畳半に続くという設定は、映画「CUBE」を思い出させます。
死の罠こそ待っていないものの、食べ物は同じ物ばかり、人恋しさがつのって小津でさえ恋しくなる始末。というか、小津との日々も実は「私」にとって大切な大学生活の一部だったんですね。
八十日間、四畳半を漂流して、それに気づいたことが「私」の一番の収穫なのかも。

最終話で、これまでの章で謎だったことも解決できて実にすっきりです。
ラストのオチにもニヤッとさせられます。
不毛な日々が鮮やかに転換する展開、さすがモリミー!

京都に行ったあとで続きを読んだおかげで、出てくる場所が実際に目に浮かんで、より楽しく読めました^^