イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密  監督 モルテン・ ティルドゥム

ダメ元で申し込んだオンライン試写会に当選して、公開一週間前に観ることができました。
完全ネタバレですので、未見の方はご注意下さい



ドイツの最強の暗号エニグマを解読して大戦を早く終わらせ、結果的に多くの人命を救う功績を残したのにも関わらず、不遇に生涯を終えたアラン・チューリングベネディクト・カンバーバッチ)の半生を描いた作品です。
彼が作製した解読機「bombe」と、計算理論である「チューリング・マシン」はコンピュータの原型となり、彼は「コンピュータの父」と呼ばれています。

エニグマ解読の任務についた時、チューリングは27才。今のベネさんとはひと回り近く違う年齢ですが、浮世離れしたチューリングが、何だかとても若く見えるんですよね。時々、ああ、まだ青年だなあ…と思いました。


有能だと見なさない人間は容赦なく切り捨てるチューリングが、唯一気に入ったのがジョーン(キーラ・ナイトレイ)でした。
解読チームのメンバーを解雇したため、代わりの優秀な人材を探すための手段が新聞に載せたパズルを早く解いた人っていうのが面白いです。
ジョーンが採用テストで、チューリングのタイムより早くパズルを解いてしまって、ジョーンと顔を見合わせた彼がニッと笑うシーン好きです^^

チューリングがランニングをしているシーンが時々出てきます。相当速かったらしいです。14才の頃、スト中で交通がストップしていたため、100kmの距離を自転車で学校に行ったこともあるのだとか。意外にも体を動かすのを厭わないタイプだったんですね。


チームのメンバーと交流することもせず、解読マシンに夢中になるチューリングは、チームから浮きまくります。でも、ジョーンのアドバイスで、メンバーと親しくなろうとリンゴを配ったり、慣れないジョークを飛ばしたりする彼がかわいすぎです
解雇されそうになった時に、みんなが味方になってくれるところ、嬉しくなってしまいます^^

二人で地面に寝そべって数学の問題?を考えていて、ジョーンが「こうすれば解ける」って教えて、二人で笑い合ってるシーンも好きです^^
チューリングは自分の事を世界一の数学者だって言ってて、きっと初めて自分より数学ができる人間に出会ったんでしょうね。それが楽しくて仕方ない感じが伝わります。
女性の能力があまり認めてもらえない時代に、彼は区別なく接していたんだなと思いました。

ジョーンにプロポーズするところもかわいいです
あり合わせの針金をくるくる巻いて指輪にしちゃうなんて、101回目のあの人よりもかなり上出来ですよ^^


婚約した後、ヒューと踊る彼女を見ながら、自分が秘密を抱えている事に表情を曇らせて…でもその後「あなたの番よ」って言われて、ぱああっていい笑顔になって
その表情の変化がたまりません このまま幸せにしてあげたかったなあ…><
純粋で純真な彼のことが愛おしくてたまらなくなります。

イメージ 1

エニグマって毎日設定が変わってたんですね。24時間のうちに設定を見つけないとその日にやってた作業が無になるっていうのは、ヒューみたいにキレてしまうのも無理ないです…それを毎日毎日繰り返すんですから。
でも、行き詰まっていた解読が、酒場での会話から思わぬ進展を見せるのがわくわくしました^^


明るい展開なのですが、だいたいこの映画、逮捕されたチューリングの映像から始まるんですよね…所々で取調室の様子が挟まれ、暗い影を落とします。

チューリングの秘密、それは同性愛者であるということでした。当時は同性愛は法律で禁じられていたのです。学生時代に愛していたクリストファーを亡くし、それが彼のトラウマに…。
また、身近にいたソ連のスパイを泳がせるのに協力するよう上層部から命令され、危険を感じた彼は、ジョーンを守るために婚約を解消しようとします。
ジョーンは同性愛の告白にも動じず、好きだと言ってくれたんですが…。彼は思うようにならなくて焦ったんでしょうか、「エニグマ解読のために君と…」は一番言っちゃいけないことでしたよね;;
去っていく彼女を見つめる彼…彼女を遠ざけたことの安心と、寂しさと…複雑な表情でした。

         ↑嫌なことを言ってでも、彼女を遠ざけようと決意したところです 

同性愛者だと分かって逮捕され、女性ホルモンの注射を受けることになったチューリング。久しぶりに訪ねてきたジョーンの前で、副作用で手が震え、好きなクロスワードパズルさえできない姿に涙です;;
肩にかけられた手に触れて薬指の指輪に気づき、「私があげた指輪よりずっといいね」って言うのも切なくて;;
そんな注射を受けるより、まだ禁固2年の方がましだったんじゃないかと思いましたが、彼にとっては愛するクリストファーの名前をつけた解読マシンと共に過ごすことが何より大切だったんですね。
そしてその後チューリングは青酸カリによる死を選びます。


暗い部屋に去っていく彼のシーンのあと、過去のシーンが流れます。
戦争終結後、一切の記録を破棄するように言われた解読チームは、燃えさかる火に、書類を威勢良く楽しげに投げ込んでいきます。仲間と肩を組み、感慨深げなチューリングの表情…。
このラストシーンが、前のシーンとあまりにも対照的なので、涙が溢れて止まりませんでした>< しかもこの時に流れるテーマ曲が美しすぎて…


ベネさんが、「彼を許すなんていう表現はおかしい。彼の方こそイギリスを許すべきなんだ」というようなことを話していました。
映画を観て、私も、「恩赦」というのは罪のある人に向けた言葉で、何も悪いことをしていないチューリングに使うのはおかしなことだと思いました。しかもそれがほんの一昨年のことだというのだから驚きです。
今思えばとんでもないことですが、日本でも思想や宗教が取り締まられていた時代があったわけで…今でもマイノリティへの対応が十分とは言い難いですし。

「時として、想像もつかない人物が誰しも予想していなかった偉大な仕事をやり遂げる」
クリストファーからチューリングへ、彼からジョーンへ、彼女からチューリングへ、そして私達へ、何度も語られるこの言葉。
アカデミー賞で脚色賞を受賞したムーアさんのスピーチにもありましたが、他の人と違っても、そのままの自分でいることが大切なのだということをこの映画は伝えてくれました。

チューリングの業績がさらに多くの人に広まること、そして誰もが差別や偏見に晒されることなく過ごせることを心から願わずにはいられません。

本当に素晴らしい映画でした。
この映画を観たら、みんなベネさんのファンになるんじゃないでしょうか。それぐらい魅力的でした。実際、一緒に観た夫もベネさんの演技を絶賛して、他の映画も観てみたいって言ってました。
ベネさん、最高の演技をありがとうございます

次は劇場に観に行きます^^地元では5月末公開なので、だいぶ先になりそうですが…。スクリーンで観るベネさんが楽しみです