街角の書店(18の奇妙な物語)  ブラウン、ジャクスン他

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“奇想”系の作品を集めたアンソロジーです。超有名作家から、無名の作家まで、よく見つけて来たなあという感じです。全18編の中から、印象に残った作品を紹介します。

「肥満翼賛クラブ」  ジョン・アンソニー・ウェスト
夫を太らせてコンテストに出場させる妻たちの目的とは…?
作品紹介に「胸焼けがしそうな作品」とありましたが、まさにその通り。これが始めに載っているというのがスゴイです^^;
あり得ないことがごく日常の風景として描かれているというのが怖いですね。

ディケンズを愛した男」 イーヴリン・ウォー
アマゾンのジャングルで遭難しかけた男が、助けてくれたディケンズ好きの男に本を読み聞かせてくれるように頼まれます。
ジャングルにディケンズっていう意外な組み合わせですが、途中からの怪しい雲行きに、こういうラストになりそうだと思いました。

「アルフレッドの方舟」 ジャック・ヴァンス
洪水が起こる事を信じて、方舟を作るアルフレッドを周囲の人間は笑いものにしますが…。
なんとも皮肉な展開。この短い中に、人間の心理の危うさが描かれていて、人気がある作家さんなのもうなずけます。

「ナックルズ」 カート・クラーク
ナックルズという邪悪なサンタクロースを子供たちに信じ込ませようとした男の運命は。
はい、スカッと!という、今はやりのバラエティ的な分かりやすい展開です。
他の作品がわりと嫌な後味の物が多いので、こういう作品があるとホッとしますね。

「古屋敷」 フレドリック・ブラウン
古い屋敷を訪れた男は、それぞれの部屋で不思議な物や恐ろしい物を見つけながら奥へと進んでいきます。
「未来世界から来た男」が邦訳された時、割愛された作品だそうです。他の三編も含め、ぜひ完全版で読みたいです。「SF」と「悪夢」に分けられた短編集ですが、これは「悪夢」に分類される作品ですね。イメージ的にはポオの「赤死病の仮面」でしょうか。ポオの他の作品を思い起こさせる描写もあります。

「M街七番地の出来事」  ジョン・スタインベック
噛まれ続けていたチューインガムが、もし意志を持ち始めたら…?
スタインベックがこんなユニークな作品を描いていたんですね(笑)
誰も彼もチューインガムを噛んでいる様子を苦々しく思っている作者の気持ちが伝わってくるようです^^;

「アダムズ氏の邪悪の園」 フリッツ・ライバー
アダムズ氏が持っている植物のコレクションは、邪悪としか言いようがない物でしたが、思わぬアクシデントが起きます。
奇想コレクションにも名を連ねている作家さん。途中、「え?」と意味が分からなくなるのですが、自分が置かれた状態があまりにも変化したせいで、時の流れが遅く感じる、という意味みたいですね。

「旅の途中で」 ブリット・シュヴァイツアー
ある物が、自分が元いた場所に戻ろうと必死になる話。
その「ある物」が問題です^^;こんな変な話、よく思いつきますね。

「街角の書店」 ネルスン・ボンド
作家のマーストンは、書きかけの作品を置いて、前から気になっていた街の書店を訪れます。そこに置いてある本とは…。
うわあ…すごく読んでみたい本が何冊かあるんですが。マーストンも作家としてではなく、一読者としてこの本屋に訪れる事ができたら違ったかも知れませんね。

どれも面白く、外れがなかったです。「遭遇」だけは、作品紹介で書かれていたことが分からないままでしたが…。
インパクトで言えば「肥満翼賛クラブ」「旅の途中で」、物語的には「ディケンズを愛した男」「アルフレッドの方舟」「街角の書店」でした。