ソラリスの陽のもとに  スタニスワフ・レム

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夏に一冊はSFを読もう!自己キャンペーンの一冊です。今回は超有名なのに読んでなかったこの作品。生きている海っていうこと以外は何も知らなかったのですが、予想してた内容とはかなり違ってました。

惑星ソラリスに、調査のため着任したケルビンは、同僚のスナウトの様子が変で、話も要領を得ない事を不審に思います。ギバリャンは行方不明、もう一人のサルトリウスに至っては、研究室に閉じこもって顔も見せない始末です。
仕方なく、ソラリスの史誌を読み始めたケルビンですが、そんな中、そこにいるはずのない人間の姿を目にします。やがて、彼の所にも“お客”が…。

ソラリスの、それ自体が一つの生命を持った海と、人類とのファーストコンタクトものです。
異星人というと、普通、手足があって二足歩行するような人間型やタコみたいなのを思い浮かべます。でも、全く異質な生命体だったら?想像の範疇から外れるようなものだったら?そういう生命体と、どのようにコンタクトをとれば良いのでしょうか。
史誌や研究冊子を通して、研究者たちがありとあらゆる方法でそれを試してきた事を知ります。でも、それはことごとく失敗に終わっていました。

海の方は与えられた機械を真似て作ったり、人間の心に入り込んだりと、自由気まま?に行動します。でも、その法則を知る事も、意思の疎通を図る事も、全く人間にはできないのです。
ゼリー状の海が、様々に形や色を変え、独自の建造物を作り上げる様子など、イメージが鮮烈です。映像で観てみたい!と思いました。

海について探る一方で、ケルビンと妻ハリーとのラブストーリーが語られます。
これがまた海に関係しているのですが、お互いについて分かりすぎるくらい分かっている二人が切ないです。

自分の力が及ばないもの、理解できないものという大いなる存在に対峙した人間が行き着く所は哲学や宗教なんですね。この物語もだんだんとそういう内容に近づいていきます。
ほとんど研究室だけで話が進み、研究員の苦悩、ケルビンの逡巡など、閉鎖的で思索に満ちた物語は一見読みにくそうに思えますが、ラブストーリーを中心に据えていることが巧いですね。

ところで、少し前にWOWOWで放送された「エクスタント」というドラマが、「ソラリス」に似ている所があったんですが、影響を受けているのでしょうか?
映画「ソラリス」の方も観てみようと思っています。