3時のおやつ(アンソロジー)

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作家さんや映画監督さんなどが、おやつについての思い出を語ったエッセイアンソロジーです。
「おやつ」って聞いただけで何だかわくわくさせられるのは、子供の頃の気持ちを思い出すからでしょうか。
30編の中で特に印象的なエッセイについて紹介します。

「いもだんご」 大崎梢
『成風堂書店』シリーズで有名な作家さんですが、エッセイを読むのは初めてです。
夫の赴任先の札幌で慣れない生活の中、同じ社宅の人が、様々な手作りお菓子でもてなしてくれた話です。
中でも大崎さんの印象に残ったのが「いもだんご」。北海道と言えばジャガイモの名産地なので、きっとおいしいだろうな…と想像します。作り方も書いてあるので作ってみたくなります。
そうやって地域の人と溶け込みながらも、関東に戻りたい気持ちが離れなかった大崎さんの、心温まると共にちょっとほろ苦い思い出が心に残ります。

「吉備団子」 森見登美彦
森見さんの作品が好きなので、一番読みたかったエッセイです。
桃太郎の吉備団子のイメージからすると、本物の吉備団子でちょっとガッカリというのも分かる気がします^^;私も初めて食べた時はそんな気分だったように思います。
でも、ほんのりと優しい甘さで、ぷにっとした感触、いかにも昔話に出てきそうなシンプルさだけど、食べた時の味わいが今でも思い出せるのが不思議です。
奥様との思い出と、吉備団子を重ね合わせたエピソードがかわいらしいです。

ココナッツサブレ」 大島真寿美
うちの家でもとってもメジャーなお菓子でした。そして、大島さんと同じく、牛乳がサブレのお供でした。牛乳にひたして食べた事も、たぶんあったと思います。
このエッセイを読んでから、気になってスーパーで探してみたところ、かわいいイラストがついた小袋に分けた物がセットで売られていて、おしゃれになったものだと驚きました。その時は見つけられなかったけど、昔ながらの長方形に茶色い字のパッケージも売られているそうです。

「煮りんごセラピー」 柚木麻子
「リンゴを煮る」と聞くだけで、何だかおしゃれな雰囲気が漂ってきます。私も昔、リンゴを使った料理に凝ったことがあって、その頃よくリンゴを煮ていました。確かに、煮ている時の甘い香りは人を楽しく温かい気持ちにさせてくれます。「セラピー」と表現するのも分かります。
煮リンゴから遠ざかって久しいけれど、たまにはことこととリンゴを煮て、心の余裕を取り戻すのも良いかも知れません。

読んで、自分のおやつを振り返ってみると、子供の時は果物が多かったなと思います。大家族だったので大皿にどんと盛られた果物を、みんなでワイワイ言いながら取って食べる楽しさを思い出します。
手作りおやつと言えば、ハウス食品のプリンと、シャービック。家族と一緒に作って、できるのが待ちきれず冷蔵庫を何度ものぞいて叱られた思い出、懐かしいです。

子供時代の思い出と郷愁が混ぜ合わされた、ちょっぴりセンチメンタルな「おやつ」の味を思い出したエッセイ集でした。