毒きのこ 世にもかわいい危険な生きもの  新井文彦 白水貴

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自称「本ときのこを愛する会」会長の私が、また買ってしまったきのこ本。
いや、自分こそ会長だ!と名乗りを上げたい方もいらっしゃると思いますが、そこは「自称」ということで。
積読本は数あれど、きのこの本だけは全て読破しているきのこ好きです。それをよく知っている家族が、一緒に本屋に行った時に「これどう?」と見つけて来てくれました。
山渓の『日本のきのこ』を始め、図鑑はいろいろ持っているので、最近は主に「読み物として面白いか」にこだわって買っています。その点で、この本はおすすめできる面白さです。

タイトル通り、毒きのこだけを集めた本です。中毒を防ぐという大目的はありますが、写真が美しく、鑑賞して楽しむこともできます。たとえ毒きのこと言ってもその姿は何とも奇妙で愛らしく、自然の中にあると2割増しの魅力があり、物語に登場するのも分かります。

まず、それぞれのきのこの名前につけられた一行紹介がいいです。
ツキヨタケは、「『今昔物語集』に登場する光る毒きのこ」だそうで、あとのページに、そのエピソードの解説が載っています。
アカヤマタケは「妖精の小さなランプ、発見!」で、オレンジ色をして、ぬめりのためにピカピカ光っている、ほんとにランプのようなかわいらしいきのこの写真が。一見毒きのこには見えません。

この本の中には私が実際に見つけたきのこも載っています。
ドクベニタケは、昔きのこ狩りに行った時に、ピンク色をしたきれいなきのこを見つけたのですが、鑑定してもらったところ、見た途端「あー、毒だね」でした(笑)
非常に辛くて苦くて食べられたものではないそうですが、始めに食べた人がいたから味が分かるんですよね。

ムラサキシメジは同じくきのこ狩りで、他のグループの人が採っていた中にありました。食菌に入っていたので、この本に載っている事に驚いたのですが、十分加熱すれば食用になるとありました。生または火の通り方が不十分だと中毒するそうです。
でも、それはきのこ全般に言える事です。きのこは消化が悪いので、基本生で食べるのはやめた方がいいです。

ドクツルタケは、「殺しの天使」と呼ばれる、真っ白な姿が美しいきのこです。ですが、少量でもほぼ確実に死に至るというまさにその名の通りのきのこです。
山の方に出かけた時、駐車場のそばの斜面に大きな白いきのこが生えていて、ドクツルタケだ!と一瞬思ったのですが、よくよく見ると少し姿形が違っていました。帰って調べると、タマシロオニタケでした。実はこれも猛毒きのこです。

テレビでも話題になっていたカエンタケは毒々しい赤で、触っただけでもかぶれる上、症状も激烈というきのこです。こんなのよく食べる気になったな…と思いますが、ベニナギナタタケと間違えたそうです。回復までに一ヶ月もかかったそうなので、気をつけたいですね。

「毒きのこ事件簿」などのコラムもあります。古くは古代ローマの皇帝を毒殺した毒がきのこだったとか。前掲のカエンタケなど、わりと最近の中毒例も載っていて、毒きのこの怖さがよく分かります。
毒きのこというとまず思い浮かべるのは、たいていの人が赤に白の点々模様のベニテングダケだと思いますが、毒きのこには食菌にそっくりな、地味でおいしそうな色合いの物も数多いので要注意です。

でも、こんなことを言うと怒られるかも知れませんが、毒きのこだからと言って蹴散らしたりするのはどうかと…。手を触れず、そっとそこに置いておけば中毒する事はありません。自然の中にひっそりと佇む愛らしい姿を、ただ楽しむだけで良いのではないでしょうか。「本ときのこを愛する会」としては心からそう思うのです。