サブマリン  伊坂幸太郎

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根拠のない自信で我が道を行く、はた迷惑な家裁調査官、陣内が帰ってきました^^
前作『チルドレン』は十年以上前の作品で、多くの人にとっては「久し振り」だと思いますが、私はわりと最近読んだので「おお、また会ったね」という気分です(笑)

陣内と武藤が今回調査するのが、車を暴走させて人を死なせた棚岡少年です。
子供の頃、両親を車の事故で亡くした上、別の事故で友達が目の前でひかれるのを見てしまうという過去を持っています。

そして、かつて棚岡少年の友人を死なせてしまった若林が陣内を訪ねてきます。
若林が少年の時に起こした事故は、「十年経っても消えることがなく、姿が見えない時もどこか、視野の外に潜んでいる。水中の潜水艦の如く、そしてことあるたびに急浮上し、若林青年に襲い掛かる」
これがタイトルの元になっているのですね。加害者、被害者それぞれの心情、そしてかつての被害者が今度は加害者となる…という負の連鎖を描いた重いテーマです。

でも、これに陣内が関わることによって、ただ重いだけの物語になっていないのがさすがです。死神シリーズでの千葉が、ちょっととぼけた味わいで和ませているのと同じようですね。
棚岡少年も、若林も、サイバー犯罪を犯した小山田少年も、陣内が自分なりのやり方で事件の関係者にきちんと向き合っていること、そして陣内らしい破天荒なアプローチで救われて行くのが気持ちが良いです。陣内の言葉、乱暴なようでいて、相手の心を打つものがあります。
武藤も、陣内にツッコミつつ、さりげなくフォローしていい味を出していますね。

表紙のオレンジ色がパッと目を引きますが、ラスト近くに小山田少年と食べるみかんの色なのでしょうか。好きなシーンです^^


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過失であれいくら反省しても罪が消える訳ではなくて、立ち直りたいけど思うようにもいかず。正解のないストーリーですけど、重いテーマをうまく希釈してくれるキャラクターの陣内が絡む作品は、これからも読みたいですね。 削除

2016/7/11(月) 午後 1:03 [ テラ ] 返信する
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「チルドレン」が大好きなので、これも楽しみにしています。陣内にまた会えるとは。 削除

2016/7/11(月) 午後 10:27 ゆきあや 返信する
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>テラさん

現実の救われなさを、物語の中で何とかしたい、と伊坂さんは思ったんでしょうね。陣内はそれにうってつけのキャラですね^^
12年後と言わず、これからもたびたび再会したいですね。 削除

2016/7/12(火) 午後 8:40 ねこりん 返信する
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>ゆきあやさん

チルドレンほど爽快ではないかも知れませんが、救いのある物語です。
陣内もややおとなしめになったかも?もっと暴れてくれていいんですが(笑) 削除

2016/7/12(火) 午後 8:41 ねこりん 返信する
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「チルドレン」を最近読んだことや「死神シリーズ」を彷彿させたことなど、同じような感想でなんか嬉しいです(^^)ああ、でも表紙のオレンジには気づかなかった。ほんと、最後のみかんとリンクしてるんでしょうね~。なんかそう思うと、ますます表紙のイラストが愛おしくなりますね。 削除

2016/7/13(水) 午後 5:52 [ sinobu ] 返信する
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>sinobuさん

私は「チルドレン」初読みだったので、陣内のキャラに驚きました(笑)でも、今はすっかりお気に入りキャラです^^
そう、死神シリーズの続編も重いテーマでしたよね。伊坂さんはその重さを緩和するのが巧いですね。
表紙、前作の水色も、今回のオレンジもパッと目を引きますね^^ 削除

2016/7/14(木) 午後 9:23 ねこりん 返信する