傷だらけのカミーユ  ピエール・ルメートル

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カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三作目です。

妻のイレーヌを亡くして五年、カミーユは、恋人のアンヌが、強盗を目撃して襲われたことを知ります。アンヌは顔に大怪我を負いますが、犯人は執拗にアンヌを狙います。犯人の真の目的は何なのでしょうか。

妻を亡くした時の記憶にいまだに苛まれるカミーユが、アンヌの事件に我を忘れて捜査にあたる焦燥感が伝わってきます。恋人であると知られれば捜査から外されるため、それを隠しているせいで上司をはじめあちこちで嘘をつくことになり、次第に追い詰められて行きます。

カミーユがたった1人でずっとつらい状態にあることで、いたたまれないような気持ちになるんですよね…。「その女アレックス」では捜査チームでの心温まるエピソードがあったのに、そういうものも一切なくて。しかも、メインの登場人物が活躍の場もなくいきなり病気で死んでるっていうのにショックを受けました。いいキャラクターだったのに…。もうこのシリーズ終わりってことで、人員整理してるんでしょうか?

カミーユの孤独な心情を丁寧に描いた内容なので、今までのシリーズとは少し趣が異なるように思いました。ミステリ的には前作までのような、あっと驚く展開は感じられませんでした。強盗犯のメンバーをひたすら追う中盤は少し中だるみしてしまったかも。

まだ中編が2編残っているそうだし、解説の池上さんが「こんなに世界的に人気を博している以上、新作を書かないわけにはいかないと思う」と書いておられるのに期待します。
カミーユに幸せになってもらいたいし、もう一度カミーユ班の明るいやり取りが聞きたいので。