代償  伊岡瞬

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遠縁で同い年の達也によって、悪夢のような少年時代を送った圭輔は、成長して弁護士になりますが、そこへ逮捕された達也から弁護の依頼が舞い込みます。

Huluでオリジナルドラマが製作され、主演は小栗旬さんです。まだ観ていませんが、その原作と言うことで前から気になっていました。
読み始めると止まらなくて。これほど夢中になって読めるミステリ、ひさびさに出会いました。

敵役である達也の人物像が凄いですね。小5にして悪魔としか言いようがない数々の行為と犯罪。人を不幸にすることを楽しみ、しかも自分の手は汚さない。陰で人を操り、犯罪を犯すよう仕向けるのです。
こんな人間がいるのだろうかと思いますが、解説の香山さんが書かれているように、現実でも人に操られ家族でさえ手にかける事件が起きています。そう思うと、この物語もリアルに感じられて怖いです。
達也の極悪さは、ルメートルの「悲しみのイレーヌ」の犯人に匹敵しますね。

前半は、幸せな家庭で育った圭輔が、それを羨んだ達也と、その義母である道子によって何もかも奪われ、道子の家でつらい生活を強いられる様子が描かれます。
これが読んでいてほんとにしんどくて。圭輔が不幸になるだけでなく、友人が襲われるなど周囲の人間にまで及びます。精神的に追い込まれていた圭輔が、達也の要求をはねつける事ができずに、大切に思っていた女の子を紹介してしまったり…。その結果が分かりすぎるくらいなので、歯がゆいというか、もう腹が立って仕方なかったです。

でも、寿人という良い友人を得たことが彼を救います。寿人のおじによって圭輔は道子の家から救い出され、そのおかげで弁護士への道を進むことができたのです。
このあたり、明るい光が差してきたようで嬉しくなるのですが、悪夢第二弾が弁護士の圭輔を待ち受けています。

ミステリとしての見所は、それまで自分の手を汚さずに犯罪を行っていた達也が、なぜ強盗殺人を行ったのか、逮捕された後も、企んでいる様子なのは、圭輔をいたぶるという他に何かあるのかということです。
周囲の人間を操る能力で、圭輔が不利になるよう仕組むのですが、自分を弁護してくれている弁護士を窮地に陥れて何かいいことがあるのか…と不思議でした。

もちろん最後には二重三重の謎もスッキリです。読者はみんな圭輔が幸せになることと、達也こそが手痛い「代償」を支払うことになってほしいと望むと思いますが、それはぜひ読んで確かめてほしいと思います。
ドラマの方もぜひ観てみたいと思っています。



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おお!読まれたのですね!楽しめたようで何よりです。達也にはかなりムカムカするでしょ?^^;寿人が好きでしたね。唯一の救いというか。コッチを小栗旬にやって欲しかったような。。イケメンすぎるかな? 削除

2016/12/26(月) 午後 4:40 ゆきあや 返信する
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>ゆきあやさん

面白かったです!これ、ミステリベスト10で話題にならなかったのが不思議なくらいなんですけど。
達也最悪でした。もうほんと、これほどやなヤツも珍しいですね。
寿人、活躍する場面が多いので、確かにこちらが小栗旬でも良かったかも。そうなると圭輔は…瑛太とか妻夫木くんとかどうでしょう? 削除

2016/12/26(月) 午後 7:50 ねこりん 返信する