その可能性はすでに考えた  井上真偽

イメージ 1

今年1冊目は、一昨年のミステリベスト10を賑わわせた作品です。
ある宗教団体の集団自殺で生き残った少女が、十数年後、事件の謎の解明を探偵に依頼します。

変わった雰囲気の作品でした。メフィスト賞の香りが漂ってくるな~と思ったら、第一作目がメフィスト賞に選ばれてるんですね。
探偵の上苙丞(うえおろ じょう)は青い髪に、目は翡翠色とターコイズブルーオッドアイ。真っ赤なロングコートを愛用する美青年です。
相棒のフーリンは中国の闇社会に属しているらしい女性で、日本で金融業を営んでいますが、仕事のためならどんな手口でも使う非情さを持っています。でも何だか可愛らしいところも見え隠れするのが魅力的なキャラです。
彼女と、知り合いのリーシーが中国語の短いフレーズを多用するので、全編中国語であふれています^^;それが邪魔と感じるか、面白いと感じるかでこの作品が合うか合わないか決まると思います。私はまあ、許せる範囲でした。

気を失っていた少女の側にあった仲良しの少年の切断遺体。犯行に使われたと思われるギロチンははるか遠くにあり、しかも少女は自分は少年に抱えられてその場所まで来たという記憶がありました。犯人は少女なのか?しかしそれは不可能でもあり…。
十数年前の事件なので現場に行くこともなく、調査資料だけを元に推理する、言わば安楽椅子探偵物です。でも、その推理する場所で、推理しながら事件が起こってるので安楽ではありませんが。
上苙の代わりにフーリンやリーシーが推理するところもあって、挑戦者も含め、どれだけ優秀な頭脳がここに集まっているのか…と思いました。

推理合戦のため現れる敵が、殺人が実行できるトリックを挙げ、上苙がそれを一つ一つ反証を挙げて否定していくことで事件の真相に迫っていきます。上苙にとってそれは「奇跡を認定する」ということにつながっているようなのですが。その時彼が相手に対して使うフレーズが「その可能性はすでに考えた」なのです。実際、すでに考えてる証拠もある所が驚きです。
ギロチンを移動するか、それとも遺体を移動するか…披露されるのはトンデモトリックの連続です。その度に新しいキャラが登場するのは、対戦ゲーム感覚ですね。
可能性さえあればいいというトリック案に対して、反証はきちんと納得できるものになっていること、よくまあこんな事考えたな、ていうのが読みどころです。

キャラと中国語のせいかラノベぽい雰囲気なのと、新キャラが次々に出てくるので雑然とした感じになってるのが残念です。最後に出てきたイタリア人の黒幕が特に残念感UPですね。名前からして、誰…?ってなりましたから^^;
真相は、今まで披露されたトンデモトリックに比べて、ずいぶんノーマルだったので、もうちょっと驚きがあっても良かったかな、と思いました。
残酷なシーンもあるものの、アニメ向きな感じがします。
でも、何だか気になるシリーズになりそうなんですよね。次作も評価が高いようなので、読んでみたいと思います。



顔アイコン

読了お疲れ様でした^^かなり読む人を選ぶ作品だと思っているので心配していましたがさすがねこりんさん、見事に読みこなしていますねえ。ミステリ部分は「本当にそれ証明出来たのか?」っていう疑問が残るのがマイナスです。私は完全にキャラ読みしちゃってます。続編のほうが作品レベルは高いのかも? 削除

2017/1/5(木) 午後 9:02 ゆきあや 返信する
.

アバター

>ゆきあやさん

確かに読む人を選ぶと思います。独自の世界観ですもんね~。キャラが立ちすぎというか(笑)
ミステリ部分、知的遊戯って感じで、実践できるかどうかは2の次っていう気もしました^^;
ちょっと癖になりそうな気もしてるので、続編も楽しみです。 削除

2017/1/5(木) 午後 10:45 ねこりん 返信する
.

顔アイコン

私はこれ、ちょっと微妙な評価でした。可能性を挙げてつぶしていく作品にしては、挙げる例が少ないような感じも受けましたし。設定でつまづいてしまった^^;中国語もちょっと読みにくかったですし。でも、ミステリ好きから評価されるのはわかるような気はしました。他の作品を読むかはちょっと様子見ですかね。 削除

2017/1/9(月) 午後 10:12 べる 返信する
.

アバター

>べるさん

確かに、思ったより挙げた例は少なかったですね^^;ただ、あれ以上新キャラが出てきてもらっても困りますが(笑)
最後までトンデモトリックで行ってほしかったのですが、そこが物足りなかったです。次作は本格ミステリベスト10で1位でしたよね。本作より可能性も多く挙がっているようなので、読み応えありそうです。 削除

2017/1/10(火) 午前 0:16 ねこりん 返信する